持久系レースに向けたカーボローディングのやり方とその効果

カーボローディング

持久系スポーツをされている人にとっては聞きなじみのある言葉ではないでしょうか。

 

「レース前に炭水化物をたくさん取ることでしょ?」

はい。ざっくり言うとそういうことになります。

カーボローディングはレースに向けたコンディショニングの一環です。

あまり難しく考える必要はありません。

 

ただ炭水化物とひとことで言っても種類があり、消化吸収してエネルギーとして使えるようになるまでにかかる時間に違いがあります。

また、食べるのを控えたほうがいいものや、食べ方の注意点など、効果を上げるために知っておきたい作法もいくつかあります。

 

この記事では、そんなカーボローディングの概要や効果、具体的なやり方を見ていきたいと思います。

 

 

カーボローディングとは?

カーボとはCarbohydrate(炭水化物)のことで、ここでは特に糖質を指します。

実際には「炭水化物=糖質+食物繊維」なのですが、ことエネルギーに関する議論では、消化されない食物繊維は無視して、「炭水化物=糖質」として扱われることが多いです。

糖質を体内にローディングする(取り込む)のがカーボローディングなので、「炭水化物をたくさん取る」でだいたい合っています。

 

食物から摂取した糖質は、「グリコーゲン」として体内に備蓄されます

備蓄したグリコーゲンは分解してエネルギーとして使うことができますが、運動で消費していくと最終的には枯渇するので、あらかじめたくさん備蓄しておいた方が有利です。

特にトライアスロンやマラソンなどは、長時間動き続けるので膨大なエネルギーを消費することになります。

そのため、レースの数日前から食事を調整し、グリコーゲンをできるだけ多く蓄えます。

これがカーボローディングの概要です。

グリコーゲンを蓄えるため、グリコーゲンローディングと呼ぶこともあります。

 

 

カーボローディングのやり方や効果など

では具体的な話をしていきたいと思います。

 

どんな場合にやるのがいいの?

マラソンやトライアスロンなど、長丁場のレースや試合に合わせて行います。

具体的な目安としては、1.5時間程度以上、動き続けるような場合が対象となります。

 

いつから、どれくらいの期間やるべき?

レースや試合の前の数日程度です。

後に説明する「古典法」「改良法」によっても違いますが、長くてもレース前1週間程度がカーボローディングの期間となります。

 

糖質をどのくらい取ればいい?

日本人は米を主な主食としていて、さらにパンや麺類などもよく食べます。

なのでもともと炭水化物多めの民族であって、普段の食事でも50~60%程度を糖質が占めています。

カーボローディングではこれをさらに増やして、食事の70%以上を糖質にするというのが目安になります。

 

カーボローディングするとどうなるの?

カーボローディングは、体内にあるタンクにグリコーゲンをせっせと溜め込んでいくイメージです。

普段は満タンになることはなく、食事で補充したら生活やトレーニングの中で消費して、を繰り返しています。

これをできるだけ満タンにした状態で本番に備えるのがカーボローディングです。

 

カーボローディングをしても大きな力を出せるようになるわけではないので、瞬発系のスポーツでは必要ありません。

長時間運動してもエネルギーが枯渇しにくく、後半になっても持続的にエネルギーを供給することができるようになります

ただしカーボローディングをしたからと言ってエネルギーが無尽蔵になるわけではありません

そこは補給食でブドウ糖などの糖質を補給したりして補います。

 

グリコーゲンはどこに、どれくらい貯蔵できるの?

グリコーゲンを貯蓄するタンクは肝臓と筋肉にあります。

成人男性の場合、肝臓に100g程度、筋肉に300g程度蓄えることが可能と言われています。

 

ケーキとか食べまくっていいってこと?

残念ながらそういうわけではありません。

高糖質の食事をしていいのなら、体づくりをするうえで制限することの多い「甘いもの」も好きなだけ食べられるじゃん、というのは危険な落とし穴です。

 

炭水化物には大きく分けて3つの種類があります。

※小糖類のうちの二糖類を分けて扱う場合もあります。

  1. 単糖類:ブドウ糖、果糖、ガラクトースなど
  2. 小糖類:砂糖、麦芽糖、乳糖など
  3. 多糖類:でんぷん、グリコーゲン、デキストリン

 

単糖類は、分子が1つの糖なのでこれ以上分解することができません。

分子の数が2~10個で小糖類、それ以上なら多糖類となります。

 

単糖類(いわゆる「甘いもの」は単糖類~二糖類)ほど消化吸収が早く、すぐにエネルギーになる反面、運動で使われずあまった分は脂肪となります。

多糖類(穀類など主食として摂取するものはここ)ほど消化吸収に一定の時間を要し、エネルギーとして使えるまでに時間がかかりますが、グリコーゲンとして貯蔵しておくのに適しています。

 

従って、カーボローディングでは米やパスタ、パン、いも類などを積極的に取り、ケーキなどは控えます。

逆にレース中には、すぐにエネルギーになるブドウ糖タブレットなどがよく補給に用いられます。

 

糖質以外の栄養素はどうする?

糖質以外はほとんど取らないという方法と、糖質以外も取る方法と2通りがあります。

糖質ばかりの食事は、カーボローディングの目的には適っているかも知れませんが、食生活が普段と違いすぎるのは体調を崩すリスクがあります。

またレース前の食事には、グリコーゲンの貯蔵だけでなく、疲労を回復したり体調を整えたりという役目もあります。

糖質の割合を増やしつつ、たんぱく質や脂質、ビタミンやミネラルなども意識してバランスよく摂取することの方をおすすめしたいと思います。

 

 

カーボローディングの古典法と改良法

カーボローディングの方法として、古典法という昔ながらのやり方と、その問題点を克服した改良法というのがあるのでここで紹介します。

 

古典法

その名の通り、昔ながらのやり方です。

グリコーゲンの貯蓄に重点をおいていて、比較的体への負荷も大きいのが特徴です。

 

  • レース1週間前に開始する
  • 週の前半
    • 糖質を減らし脂質を増やす
    • 運動で追い込んで糖質を枯渇させる
  • 週の後半
    • 糖質量を増やし脂質を減らす
    • 練習は減らし(または休み)、糖質を蓄積する

 

以上が古典法のやり方です。

前半の低糖質食と運動でいったん枯渇→後半の高糖質食で一気に蓄える、という流れです。

糖質の摂取量を急激に変化させることでグリコーゲンを効率的に取りこむわけです。

 

 

改良法

 

しかし古典法の場合、食事の変化やトレーニングの負荷などでレース前に体調を崩してしまうリスクもあります。

この弱点を克服するために考えられたのが改良版です。

 

  • レース前1週間は軽めのトレーニングにする
  • レース4日前までは普段通りの食事をとる
  • レース前の3日間は高糖質食にする

 

改良版であれば普段の食生活との変化が小さく、無理なく行えます。

トレーニングを控えめにすることで、糖質を多めに摂取して、消費を抑えています。

 

 

カーボローディングでガソリン満タンのスタートに

以上、マラソンやトライアスロンのコンディショニングとして効果的なカーボローディングについてでした。

 

  • 対象は目安として1.5時間以上のレースや試合
  • レース前1週間くらいで行う
  • 糖質は普通食が50~60%であるのに対し、70%程度の摂取を目安にする
  • 直前は練習量を抑えてグリコーゲンの消費を抑える
  • 甘いものは控える
  • その他の栄養素もバランスよく取る

 

これらのポイントを押さえて、万全の状態でレースに臨みましょう。