【トライアスロンのスイム練習1】長く楽に泳ぐためのトレーニング

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トライアスロンを始める人には、水泳の心得がある人が多いようです。

中学や高校で水泳部だったとか、スイミングクラブに所属していたとか。

トライアスロンでは長距離を泳ぐので、泳ぐことに拒否反応、あるいは苦手意識がある人はその時点で「トライアスロンなんて無理に決まってるっしょ」となってしまいます。逆に泳ぎに自身がある人は、「あとは自転車乗って走るだけだから、まあ余裕っしょ」と楽観的になりやすいわけですね。

 

私の場合、小学校の時に少しスイミングクラブに通っていた程度で、水泳の腕前は平均的で、トライアスロンを始めるまでは100m以上続けて泳いだ記憶はほとんどありませんでした。

なので最初はクロールで1.5kmとか泳げるようになるかには懐疑的で、いざとなったら平泳ぎだな、と思っていました。しかし練習を重ねるうちに自然と長距離を泳げるようになり、また平泳ぎよりもクロールの方がむしろ楽に長く泳げるようになりました。結果、アイアンマンで始めて泳いだ4kmも、さほど苦になりませんでした。

 

長距離、しかもオープンウォーターで泳ぐトライアスロンでは、いくつか短距離の水泳とは違った意識、違った練習が必要です。

まずは、長い距離を泳げる基本的な泳力を身に付けていきましょう。

 

水の抵抗を受けにくい水中姿勢を理解する

水の抵抗を受けにくい水中姿勢とは、進行方向から見た体の面積が小さい姿勢です。

進行方向から見た面積を小さくするには、体をまっすぐに伸ばし、頭からつま先までを極力水面と平行に保つことが大切です。特に、頭が上がってしまっていたり、下半身が沈んでいたりすると、水の抵抗を受けてブレーキがかかります。

 

この差は次のような2通りの泳ぎ方を試してみていただけると歴然とします。

A) キック(バタ足)をしないでクロール
B) ビート板を縦にして両腿で挟み、キックをしないでクロール

 

Aではキックをしないので下半身は沈んでいきます。キックの推進力がないこともありますが、下半身が沈むことで水中抵抗が増え、なかなか前に進みません。

一方Bは、キックの推進力がないのは同じですが、ビート板の浮力によって下半身が浮くので、水中姿勢が水面と平行に近くなります。その結果、抵抗を受けにくく、Aに比べてスムースに前に進みます。

 

正しい水中姿勢を身に付けるには?

正しい水中姿勢は一朝一夕には身につきません。特にバイクやランで脚の筋肉を鍛えているトライアスリートは下半身が重く、沈みやすい傾向にあります。

個人的に、水中姿勢を改善する方法としては、

  • 練習中、できるだけ水中姿勢を意識して泳ぐ
  • 水中姿勢を改善するためのドリルを行う

が効果的と考えます。

 

前者はちょっと精神論的ですが、意識することは重要です。実際に姿勢を保つのはキック(バタ足)の仕方や体幹の筋肉の使い方だと思いますが、姿勢を意識するだけで使えていなかった腹筋が使えたりします。

 

後者は、私が毎回スイム練習の冒頭でやっている内容です。

①プールの壁を蹴って泳ぎ出す。
ただしこの時、手は前に伸ばし、顔は水につけ、体全体もまっすぐに伸ばすだけ。
壁を蹴った推進力だけで前に進みながら、水中姿勢を水面と平行に保つ。
②推進力がなくなって止まりそうになったら浅く軽くキックを始める。
速く進むのではなく、水中姿勢を維持できる程度のキックで、必要に応じて息継ぎしながら25m。

これを数回繰り返してから、泳ぎのトレーニングに取り掛かるようにしています。

 

プールでの練習と、オープンウォーターでの本番の違い

ちなみにこの水中姿勢の話は、トレーニングとレースでは事情が違ってきます。

トライアスロンのスイムは、多くのレースでウェットスーツ着用が可能、または義務です(着用禁止の大会もあります)。トライアスロン用のウェットスーツは、3㎜~5㎜程度の厚みの水に浮くゴム素材を使用していて、プールで泳ぐときに比べて、何もしなくても格段に水中姿勢が向上します。

これによって通常、プールで泳ぐよりも本番の方がタイムが上がったりするのですが、だからといって練習で水中姿勢を意識しなくてよいというわけにもいきません。

 

そもそも、プールを使用した大会やウェットスーツ着用禁止の大会もあれば、水温次第で突如ウェットスーツ着用禁止に切り替わる場合もあるので、やはりスイムの基本として、ウェットスーツなしでも正しい水中姿勢で泳げることは大切です。

また、水面と平行に近い姿勢を取ることで、レースと同じようなフォームで泳ぐことができ、より本番を想定したトレーニングができると思います。

 

キックは頑張らない

これもトライアスロン独特の考え方かと思います。

キックを頑張らないほうが良いという理由は、前述のようにウェットスーツによる浮力が見込めるということもありますが、後のバイクとランのために脚の筋力を温存しておきたい、という戦略にあります。

もともとキックの推進力というのは上半身の作り出す推進力に比べてかなり小さいです。低速でこそキックも推進力としての役割を果たしますが、高速になればなるほど推進力としての意味は薄らぎ、キックの質によっては逆に水の抵抗を生んでしまうこともあるようです。

 

そのためキックは練習でも、水中姿勢を保つため程度の、小振りで軽めのキックを意識すると良いと思います。キックは脚の付け根を動かして、しなるように打つと余計な水の抵抗を生じにくいとされています。

ただ、レース全体を通してキックの推進力は小さいとはいえ、序盤のバトルから抜け出したいときや、他の選手を追い抜きたい時など、瞬発的な推進力が必要になるときもあります。そういう時のために、質の良いキックを打てるような練習をしておくと役に立つでしょう。

キックの練習はひとまず置いておいて、という時は、プルブイという補助具を使った練習もあります。プルブイは両腿の間に挟んで浮力を得る練習用の補助具で、これを付けると自然と下半身が浮くのでキックはせずに純粋に上半身のトレーニングに専念することができます。

 

 

キックでエネルギーを消費することは、後のバイクやランに影響するだけでなく、スイムのスタミナとスピードにも影響します。キックを頑張りすぎないことは、長い距離を泳げるようになる上で、意識しておきたい重要なポイントです。

 

プルも頑張りすぎない

まずプルという用語ですが、クロールでの腕の動作の一部を指します。手が頭の先で着水したあと、手のひらで水を後ろに向かってかく動作のうち、手がおへその下にくるくらいまでをプル、そのあとをプッシュと言います。

クロールの推進力のほとんどはこのプルからプッシュの動作で生み出されます。

 

しかし、ここで力いっぱい水をかいてしまうと疲れてしまい、長距離はなかなか泳げません。まずはスピードやタイムは度外視して長い距離を泳ぐには、プルでうまく脱力することが大切です。

ランニングで一歩一歩力を込めて地面を蹴るのではなく、小さなストライドでピッチ走法をするのが省エネになるのと似ています。

 

コツはいろいろあると思いますが、個人的には手首に入れる力の加減で脱力度合いを調整している気がします。

速く泳ぐときは水を押し出す方向に対して手のひらを垂直に向けますが、手首の力を抜くと、それによってかき出す水の量が減るので、推進力は減りますがその分省エネで泳げます。

 

トライアスロンのスイムを余裕で泳ぎ切る泳力を身につけよう

さていかがでしたか?

要点をまとめましょう。

・長く楽に泳ぐには、体が水面と平行に近い方が有利
・トライアスリートは下半身が沈みやすいので、水中姿勢を意識して練習する
・キックの推進力はあまり期待せず、脚はバイクとランに取っておく
・長く泳ぐ秘訣は脱力にある、プルも頑張りすぎない

 

トライアスロンのレースに向けては、オープンウォータースイムならではのバトルや、進行方向を確認するためのヘッドアップでの泳ぎなど、まだまだポイントがあります。それらはまた近々、別記事で情報提供していきたいと思います。

最後までお読み下さり、ありがとうございました。