シリーズ「トライアスロンのルール」、第4回は大会での禁止事項についてです。
トライアスロンのレースは危険をともなうこともあり、とくに安全に配慮した決まりごとというのがいくつもあります。
また、公平性を保つためや大会を円滑にすすめるため、あるいは公道を使うレースでは通行人や周辺環境への配慮も含め、レースに参加する選手が知っておくべき事柄も多数あります。
ここではJTUの競技規則に基づいて、大会でやってはいけないことや注意すべきことなどをピックアップして紹介していきたいと思います。
競技全般における禁止・注意事項
まずは競技全般における禁止・注意事項です。
個人的援助の禁止
応援者から物(例えばドリンクや補給食など)を受け取ったり、選手間で助け合ったりしてはいけないという事です。
つまり自分で用意した物だけを使って、自分の力だけで競技をせよ、という事ですね。
もちろん大会側で用意したエイドステーションで水や補給食を受け取ることは問題ありません。
この「個人的援助」には、
- 他の選手の前進を手助けすること
- 応援者やコーチなどが伴走や追走をすること
- 拡声器を使って他の選手との時間差を伝えること
なども含まれます。
意外と厳しいですね。
気軽な気持ちで応援の家族からドリンクを受け取ったりすると違反になってしまうので注意しましょう。
記憶に新しいところでは、2019年お台場で行われたオリンピッククオリフィケーションイベントのエリート女子で、1位2位でゴールしたイギリス人の2選手が手をつないでゴールしたために失格になりました。
私は現場で見ていましたが、猛暑の中、同じ国の2選手が互いを称えながらゴールする様は微笑ましく印象的でした。
でもそこはルールはルールということなんですね。
今後のレースではああいうシーンはもう見られないかもしれませんね。
スイムでの禁止・注意事項
スイムパートでの禁止事項や注意事項を見ていきましょう。
スタートやコースについての禁止事項
ごく当たり前のことですが、不正スタート(要するにフライングなど)や、指定されたスタート位置以外からのスタートは禁止です。
トライアスロンのスタート方法は、陸から走ってスタート、フローティングスタート、飛び込みの3種類があります。
また多くの大会で、いくつかのグループに分けて時間差でスタートする「ウェーブスタート」が採用されています。
スタートのルール詳細についてはこちらの記事を参照して下さい。
オープンウォーターの場合はところどころ浮いているブイでコースが示されています。
このブイの内側を通ってショートカットしたりするのはもちろんNGです。
泳いでいるとブイが見にくかったり、知らないうちにあらぬ方向に進んでいたりすることもありますが、うまくヘッドアップしてコースを確認しながらレースを進めましょう。
水底に足をつけるのはOK?
そもそも入水時やスイムアップ時には水底に足をつけるわけで、足がつくのであればついても違反にはなりません。
プールでのスイムの場合も、足をつくことは問題ないとされています。
ただし歩いたり水底を蹴って推進力を得ることは禁止されています。
危険行為や危険物
トライアスロンのスイムは混みあった場所では「バトル」と呼ばれるほど他の選手との接触が発生します。
ある程度の接触は不可抗力ですが、意図的に肘打ちをしたり、蹴ったり、のしかかったりするのはもちろんNGです。
接触時に危険となる装飾品なども、身につけるのは禁止されています。
浮力を得られる用品
自力で泳ぐ競技ですから、浮き輪など浮力を得られる用品は基本的に使用が禁じられています。
ウェットスーツは着ているとかなりの浮力を得られますが、これは着用が許可されている大会であれば禁止用品から除外されます。
ただし初心者向けの大会など、一部の浮き具が許可されている場合もあるので、必要な場合は大会要項を確認しましょう。
プルブイの使用が許可されている場合もあるようです。
その他、足ヒレやパドルなど推進力を得られる用品も禁止となっています。
バイクでの禁止・注意事項
続いてバイクパートでの禁止・注意事項です。
決められたコースを遵守しなければならないのは当然ですが、それ以外にもいくつか注意したい点があります。
ドラフティング
ドラフティング(前の選手のすぐ後ろについて空気抵抗軽減などのメリットを得ること)はエリートレースなどをのぞいて基本的に禁止されています。
詳しくは別記事で。
バイクにつけてはいけないもの
「競技に無関係な装備」は取り付けてはいけないことになっています。
ではどんなものが競技に無関係とされているかというと、
- 前照灯
- リフレクター
- ベル
- 泥除け
- スタンド
などです。
確かに無関係と言えば無関係ですが、ライトとかベルとか、普通にロードレーサーにつけている人も少なくないと思います。
リフレクターやベルなどは、大会のバイクチェックでもあまり注意されていない印象ですが、念のためこれらのものは外して参加した方が無難です。
特に泥除けやスタンドなどは、必ず外しておいた方が良いでしょう。
バイクに付けておいていいもの
ではバイクに付けておいていいものは何でしょうか?
以下の装備はバイクに取り付けていいと明記されています。
- スペアタイヤ
- 空気入れ(インフレーター)
- バイクボトル
- ボトルケージ
付けていいというよりこれは必需品ですね。
またエネルギージェルなどの補給食もバイクに貼り付けたりしますが、競技会場によっては禁止の場合もある(バイクコース上のごみ散乱を防止するため)ので注意してください。
その他バイクでの注意事項
その他気になったルールをいくつかあげます。
- 逆走禁止(ものを落としたりした場合は、バイクを降りて押して戻る)
- 上半身裸は禁止
- 胸など胴体部分をハンドルに接触させ続けるフォームでの走行(ってどんなフォームなのか…)
- ヘルメットはバイクに乗る前に付けて、バイクを降りてから外す
ランでの禁止・注意事項
最後にランパートでの禁止・注意事項です。
レースナンバーは指示通りにつける
トライアスロンではスイムをのぞき、ナンバーベルトを使ってナンバーゼッケンを胴体につけておくのが一般的です。
スイムアップ後、バイク乗車前にナンバーベルトをつけるのですが、バイクではナンバーが後ろに来るように、ランでは前に来るようにします。
特にゴール時は、ゴール前のスタッフから「ナンバー前から見えるようにして」と声をかけられることが多いです。
ナンバーが前から見えるようになっていることで、ゴールエリアのDJが番号と名前を呼んでくれたり、写真撮影のある大会ではあとから自分の写真を探すのが楽になります。
休み休みでも自分の力で進む
ランパート中に歩くこと、また止まって休むことは問題ありません。
一方で、関係者やペースメイカーなどが伴走することは禁止です。
休み休みでもいいので自分の力でゴールせよ、という事ですね。
ただし地面を這って前進することは禁止、と書かれています。
さすがにそこまでする人はなかなかいないと思いますが。
トライアスロン大会でやってはいけないこと-まとめ
今回はレースでの禁止事項、注意事項について整理してみました。
もちろんこれがすべてというわけではありませんが、よく疑問に上げられるもの、あらためて競技規則を読んでいて気になったものなどを中心にあげてみました。
レース会場にはオフィシャルライセンスをもった審判員がいて、ウェアや用品、選手の振る舞いに目を光らせています。
違反をしてペナルティを受けることがないよう、主要なルールは必ず頭に入れておきましょう。