【トライアスロンのルール2】バイクでのドラフティングルール

シリーズでお届けしている「トライアスロンのルール」

第2回目は、バイクでのドラフティングルールについてです。

トライアスロンを始め、いくつかの競技で取り入れられているルールですが、覚えておかないと反則でペナルティを受けたりするので注意が必要ですね。

 

 

そもそもドラフティングって何?

ひとことで言うと、

「前の選手のすぐ後ろを走ることで、空気抵抗を減らして楽すること」

です。

 

ちょっと堅苦しい話になりますが、ドラフティングについてもう少しだけ説明します。

 

物体(ここでは選手や自転車など)が前に進むとき、その物体は進行方向と逆向きの空気抵抗を受けることになります

一方、その物体の後方には空気抵抗の低いエリアが発生します。

このエリアには、物体の移動によってできた気圧差によって空気の渦が生じ周りの空気や物体を吸引する力が発生します。

これがいわゆるスリップストリームというやつです。

 

このスリップストリームに入ると、空気抵抗の低減と気圧差による吸引力によって、スリップストリーム外に比べて格段に推進力が増します

つまり楽に、速く進めるようになるのです。

トライアスロンやいくつかのスポーツにおいては、競技中に他の選手のスリップストリームに入って走行することを、「ドラフティング(Drafting)」と呼んでいるのです。

 

冬季オリンピックなどで観る、スピードスケートのチームパシュートなどは、この原理を合法的に競技に取り込んでいる一例ですね。

3人1列になって一糸乱れず滑ることで後方2人の体力を温存し、負荷の高い先頭を交代しながらスピードを競う競技です。

 

ツールドフランスを始めとした自転車レースも最たる例です。

ツールなどのレースはチーム競技ですが、その所以こそドラフティングを利用したチームプレイです。

チームのエースを他のチームメイトが引っ張ることで、エースの体力を温存させて最終的に勝たせるなどという戦法が取られます。

また一方で、アタックした別のチームの選手同士が引っ張りあったり、勝つために人を利用したりあるいは利用されたりという事もあり、自転車レースの醍醐味にもなっています。

 

 

ドラフティングの効果ってそんなにあるの?

「スリップストリームとかいうけど、ほんとにそんなに違うの?」

 

とか思いますよね?

 

でもロードバイクのように高速移動する場合、実際かなりの違いがあります

 

バイクの練習仲間がいる方は、高速巡行中に引っ張ってもらった時と自分が先頭をいく時とで比べればはっきり分かると思います。

またレース中でも、抜いたり抜かれたりする時に短時間ドラフティングポジションに入ることがありますが、疲労の溜まったレース後半などはその効果を如実に感じることになります。

 

感覚的になってしまいますが、35km前後のスピードで同じ力で漕いでいたとして、ドラフティングの有無でだいたい1割くらいスピードが変わってくるように感じます。

 

こうしたドラフティング効果の一端を示す動画があるのでご紹介します。

スペシャライズドの米本社に行くと、ドラフティングでどのくらい空気抵抗が低減されるのかを体感できる設備があるのだそうです。

床に映し出された空気抵抗を表すグラフが、前傾姿勢を取ることで若干下がり、人が目の前に来ると劇的に低下します。

前にいる人と自転車との距離によって抵抗がことなることも示しています。

 

ドラフティングはこんなに効果がある スペシャライズド風洞実験

出典:Cycle Sports

 

 

トライアスロン大会におけるドラフティングルール

JTU(日本トライアスロン連合)の定める競技規則では、ドラフティングルールについての節を以下の文言から始めています。

バイク競技でのドラフティングとは、他の選手又は車両のドラフトゾーンに入って走行する行為をいう。競技 区分でのドラフティング可否により、それぞれの競技方法を制定する。

 

トライアスロンではドラフティングがOKなレースとNGなレースがあり、前者を「ドラフティングレース」、後者を「ドラフティング禁止レース」と呼びます。

 

JTU競技規則では、下表のように競技種別によるドラフティング可否を定めています。

ちなみにJTU競技規則はITU(世界トライアスロン連合)の競技規則(Competition Rules)にほぼ準拠しているので基本的にはITUルールと同義です。

 

出典:JTU

 

原則的に、エリートや23歳以下のレースではドラフティング許可、エイジグループ(リレーを除く)やパラでは禁止ということになります。

ただし、各大会でのルールは最終的にはイベントの開催者に委ねられることになるので、大会の開催要項で確認するのが基本です。

 

ではITUやJTUの定めるドラフティングルールについてもう少し触れたいと思います。

 

ドラフトゾーン

ドラフトゾーンとは、下図で濃い色に塗られた、前をいく自転車を含む縦10~12mの長方形のエリアを指します。

 

出典:JTU

 

このエリアに所定の時間以上入っていると、故意にドラフト効果をねらっていると見られ、違反と判断されてしまいます。

追い越しは既定の時間以内で行い、追い越された側も加速をしないなどしてドラフトゾーンの確保に努める必要があります。

 

 

ドラフティング禁止レースでの注意点

またドラフティング禁止レースでは以下のようなことが定められています。

  • キープレフトを守って走行する
  • 並走は禁止
  • ドラフトゾーンに入っていても入っていなくても集団走行はNG
  • ブロッキング(追い越しを妨害する行為)の禁止

 

ドラフティングルールに違反した場合

エイジグループのレースであっても、通常レースコースには審判員が配置されています。

その審判員がドラフティング違反と判断した場合は、違反した選手にペナルティが課せられます。

競技規則の定めるところでは、

  • ブルーカード:タイムペナルティ
  • イエローカード:ストップ・アンド・ゴー

などのペナルティがあります。

 

実際のレースではそれほど厳密にドラフティング違反を取り締まってはいないと思いますが、トランジッションエリア付近に設けられたペナルティボックスに入れられている人を見ることはたまにあります。

せっかくの頑張りに水を差すことになってしまうので、気をつけたいですね。

 

 

他人の力に頼らず自力でゴールしてこそトライアスロン

エリートとエイジのレースを比べると、そもそも参加人数やスピードなどレースが大きく異なりますが、ドラフティングの可否がさらにその違いを明確にしています。

つまり、ドラフティングしてもいいエリートレースではより技術や戦略が求められ、ドラフティングが禁止されているエイジでは自分の力だけで進まなければなりません。

 

エイジグループのレースは、まさに「自分との闘い」なのです。

 

大会に出場するにあたってはそれなりの期間、節制やトレーニングや研鑽を積み重ねてきたはずです。

ようやくやってきた大会で他人の後ろに入って力を借りれば、何の苦もなくさらに大きな上積みを得ることになります

ですがそれでは何か、時間をかけて積み上げてきたものの価値を貶めているように感じないでしょうか?

 

レース中、意識的ではないのにいつの間にかドラフティングポジションに入ってしまっていることもあります。

そんな時はすっと横にそれたり、車間を取ったりしてポジションを変えましょう。

「ゴールするのに誰かの力なんでいらない」

トライアスリートであればそんな気概を持っていたいものですね。

 

そんな人の手を借りられないトライアスロンですが、道具の力を借りることはできます。

トライアスロンバイクはフレーム自体が空気抵抗を限りなく抑えた設計になっていますし、より低い前傾姿勢を取るためにハンドルバーに取り付ける「DHバー」があります。

DHバーについては以下の記事に関連情報を載せています。

 

 

 

 

バイクでのドラフティングルール-まとめ

今回はトライアスロン大会におけるバイクのドラフティングルールについてお話ししました。

前を走る人や車の後ろにできる、空気抵抗の小さい「スリップストリーム」に入って推進力のメリットを得ることがドラフティング、でしたね。

 

オリンピックなどのエリート大会ではドラフティングが許可されていますが、一般のエイジグループレースでは基本ドラフティングは禁止されています。

ドラフティング違反を取られるとタイムペナルティなどを受けて残念なことになるので、十分車間を取って、追い抜きはスピーディに行うよう心がける必要があります。

 

 

 

 

 

 

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