シリーズ「トライアスロンのルール」、第5回はトランジションについてです。
トライアスロンにおけるトランジションは、スイムからバイク、バイクからランへの移行を意味します。
トランジションエリアはバイクやシューズ、ヘルメットや補給食など、レースで使用する用具を置いておくための場所でもありますが、それらの置き方や作法など最初はどうしていいか分からないと思います。
ここではトランジションエリアでの競技用具の置き方(セッティング方法)や、トランジションのやりかたと注意事項などを整理したいと思います。
トライアスロンのトランジションとは?
まずはトランジションの基本をおさえたいと思います。
通常スイムからバイクへの移行を「第1トランジション」、バイクからランへの移行を「第2トランジション」と呼びます。
「T1」や「T2」と表記することもあります。
通常ショートディスタンスではT1とT2は同一の場所ですが、ミドルやロングになるとT1とT2が全く別の場所であることもあります(T1がスイム会場近く、T2がゴールのある大会本部付近、など)。
トランジションする場所のことを「トランジションエリア」と呼びます。
トランジションエリアの定義は、スイムフィニッシュからバイク乗車位置まで、及びバイク降車位置からランスタートまでです。
ここでウェットスーツを脱いでヘルメットをかぶったり、バイクを取ったり置いたり、シューズを履き替えたりするわけですが、この時間もすべて競技時間に含まれます。
したがってトランジッションのスピードも重要になってくるわけです。
エリートのオリンピックディスタンスなどではウェットスーツも着用しないので、トランジッションはあっと言う間です。
大会によってトランジションエリアの範囲が違うのでタイムはまちまちですが、実際自分のバイクラックの前にいる時間はせいぜい十数秒程度ではないでしょうか。
エイジグループではそこまでタイムにシビアではないので、しばしの休憩と言わんばかりに補給をしたり、屈伸などして調子を整えたりする人も少なくありません。
一人に与えられるスペースはそれほど広くはありません。
バイクをかけるためのバー(バイクラック)があり、そこに各選手のナンバーが貼られていますが、バイクをかけると隣と接してしまうのではないかと思うくらい間隔が狭かったりします。
自分の競技用具をおけるのは自分のバイクがかかった下のスペースだけで、そこにシューズやその他必要なものを置きます。
ではこのトランジションエリアのセッティング方法について詳しく見ていきましょう。
トランジションエリアでの競技用具の準備方法
レースで使う競技用具はトランジションエリア内の決められたスペースに置いておく、という大会が多いです。
ロングの大会などではバッグドロップシステム(荷物預け方式)と呼ばれる、用具を指定のバッグに入れて預ける場合もあります。
細かいルールは大会によって異なることもありますが、ここでは基本的に「もっともよくあるパターン」を想定して話をしたいと思います。
まず、バイクラックとなる水平のバーにナンバーシールが互い違いに貼ってあり、自分のナンバーシールが見える側が自分のスペースです。
ラックにバイクをかける時は、ナンバーシールが貼ってある側にハンドルバーが来るように向けて、サドルをバーにひっかけます。
このとき前輪がトランジション通路の中央に向かうようにかけるので、バイクの向きはT1でバイクを取るときの進行方向と同じになります(駐車場でバックで駐車したような状態)。
バイクをラックにかけたら、その他の競技用品を置きます。
T1では、
- ヘルメット
- サングラス
- バイクシューズ
- ソックス*
- ウェア類*
- 補給食やドリンク*
など(*は必要であれば)。
T2では、
- ランニングシューズ
- 帽子やサンバイザー*
- ウェア類*
- 補給食やドリンク*
など(*は必要であれば)。
これらを必要な順番を考えて、効率的にトランジットできるように置いておきます。
ヘルメットやサングラスなどのバイク用品は、T1のバイクの上に置いておくこともできます。
よくあるのはDHバーの上にヘルメットを逆さにしておき、ヘルメットの中にサングラスや補給食などを入れておくやり方です。
地面に置いておくよりも取りやすいので、ストレスも少なく時間的にも効率的です。
またバイクシューズをバイクに付けておくこともJTU競技規則では許可されていますが、その場合乗車位置まで裸足(またはソックスだけ)になるので、レース環境によって禁止されている場合もあります。
トランジションエリアでの注意点
トランジションエリアでの禁止事項など、注意点を上げていきます。
エリア内でのバイク乗車
トランジションエリア内ではバイクの乗車が禁止されています。
主にエリートレースなどで、周回の際にトランジションエリア内を通過するコース設定の場合がありますが、その場合は除きます。
「乗車」の定義ですが、サドルに乗っている状態、バイクにまたがっている状態、ペダルに片足を載せて走行している状態を指します。
つまり実際にバイクを漕いでいなくても、片足をペダルに乗せて助走しているのもNGという事になります。
ちゃんとエリアを完全に抜けて、指定された乗車位置につくまではバイクを引いて歩く、または走るようにしましょう。
ヘルメットの着用
バイクではヘルメットの着用が必須です。
ヘルメットは、バイクスタート時にバイクをラックから降ろす前に着用して、バイク終了時にバイクをラックにかけてから外します。
ここでも、「着用」とはヘルメットをかぶるだけでなく、ストラップをしっかり締めるところまでを指していることに注意しましょう。
トランジションエリアでの振る舞いについて
トランジションエリアでは、他の競技者の邪魔になることや、公序良俗に反する振る舞いをしてはいけません。
例えばエリア内の通路、すなわち選手の動線上で立ち止まることは禁止されています。
着替えたり靴を履いたりするのは自分のバイク付近のスペースで行い、できるだけ通路にはみ出さないようにします。
また、着替え用の更衣テントが用意されている場合がありますが、テント内などの指定された場所以外で裸になることも禁止されています。
持ち込みが禁止されているもの
トランジションエリアはスペースが限られていることもあり、競技と関係ない余計なものを持ち込んではいけないことになっています。
レース後の着替えやバッグ類、貴重品などは、荷物預かり所に預けるようにしましょう。
ドリンクを冷やしておくための小さめのクーラーボックスを持ち込んでいる人を時々見かけます。
ルール上では、必要最小限の大きさであって競技の邪魔にならないことを条件に、事前に申請をしたうえで持ち込む、という事になっているようです。
皆さん申請をしているのかどうか分かりませんが、事前に確認を取っておいた方が無難と思われます。
まとめ-トランジションのやり方と競技用具の準備方法
さて今回は、
- トランジションとは何か
- 競技用具の置きかた
- トランジションの注意点
についてまとめました。
トランジションのスピードアップのコツをまとめた記事を別に用意しました。
よろしければこちらも参考にしてみてください。
3種目を連続して行うトライアスロンで、4つ目の種目ともいわれるのがこのトランジションです。
スピードも重要ですが、ルールを正しく理解して臨むことがまずは先決ですね。