市民アスリートのSNSに蔓延する、リア充ならぬ「○○充」って?

 

そういえば、いつの間にかリア充という言葉をすっかり聞かなくなった気がする。

 

時代を反映したわりとよくできた言葉だと思っていたが、やはりネットの俗語、一過性のものだったということか。

ネットが仮想現実で、ネット以外が現実の生活(リアル)という分け方ができた時分には成り立っていたが、スマホがこれだけ普及して誰もがSNSを使うようになってしまうと、これはリアルであれはリアルじゃないとかいうのはナンセンスなのかもしれない。

 

「リア充」・・・現実(リアル)の生活が充実している人のこと

 

もともとは、インターネット上の仮想コミュニティの住人たちが、自らを卑下して使い始めたのがこの言葉の起源だという。現実の世界で恋人や配偶者、あるいは友達がいるかどうかというのが主な判断基準だったと言われている。

それが、リア充という言葉が広まるにつれてより一般化され、人間関係だけでなく職業や趣味、習い事なども含めた広い意味で現実生活が充実しているかどうか、というのが判断基準となった。

 

そういう意味では、トライアスリートに限らず市民アスリートとくくられる人々はすべて「リア充」と言っていいのではないかと思う。

今や市民アスリートも多くがSNSのアカウントを持っていて、さまざまなハッシュタグで日夜そのリア充披露の応酬が繰り広げられている。そんなSNSをいろいろ見ていて、リア充と言ってもいくつかのカテゴリーに分けられるような気がしている。

 

というわけで市民アスリートの「〇〇充」を、決して悪気はなくいくつか挙げてみたいと思う。

 

 

市民アスリートのSNSにみられる症状① 「ギア充」

ギア、つまり道具。

正確には道具一式という意味になるらしいが、語呂がいいのでここでは道具一般として使わせてもらう。

 

自分の所持している、または新たに購入した道具についての投稿。

「ついに念願の○○買いました!!」のような直接的なものもあれば、インスタ写真にさりげなく登場させてみたりも。多くは他人にしてみればどうでもいいものだが、害はない。

グッズのトレンドが見えたり、参考になるレビューがあったり、そんな新製品があるのかと気になったりもする。

 

それにしても、SNSに登場するギア充たちはどうにも平均年収が高いらしい。

高価な自転車、高価なトレーニング器具、高価なウェア。一体年間どれだけトライアスロン費を計上しているのだろうと考えてしまう。はやりの経営者トライアスリートだろうか。

さらには中高生が高級自転車を所持していたりするので驚く。本格的にやっているのだろうか、あるいはどこぞの御曹司なのかもしれない。

自分が高校生で初めてロードレーサーを買った時は、入学祝の10万円きっかりでぎりぎり買える自転車を買ったものだ。まあ遊び半分だったのでそれで充分だったのだけど。

 

 

市民アスリートのSNSにみられる症状② 「トレ充」

トレーニングやってます系の投稿。

「○○日連続ランニング継続中!!」という気合の入ったものや、「週末ロングライドで△△行ってきました!!」という、かなりの確率でインスタ映えする食べ物(スイーツとラーメンが大半を占める)の写真つきのものなど。

多くは他人に向けられたものというよりも、自分の行動あるいはトレーニングログのようなものだろう。短い日記をつけるような感覚に近いのだろう。

 

極めつけはトレーニングした時間や距離のスタッツ入り画像の投稿だ。

スマホのランニングアプリや、GPSウォッチの連携アプリから簡単に投稿できるようになっていて、途中で撮影したと思しき写真とともに毎日こまめに投稿されることが多い。

もちろんご当人方には悪気はないのだろうが、閲覧側にしてみれば何を見せられているのだろうという感じは否めない。トレーニング日誌のようなものはモチベーション維持や練習の振り返りのために有効だが、特にそれを公開しなくても良いのではないかとは思う。

 

 

市民アスリートのSNSにみられる症状③ 「デル充」

「今週末○○大会に出ます!」あるいは「△△レース出てきました」というデル(出る)充。

こればっかりは同じくスポーツを楽しむものとして、単純に頑張ってねと言いたくなる。

レースへの出場は市民アスリートの晴れ舞台であり、最大の喜びである。世界中に発信してその喜びを拡散したくなる気持ちも分からないでもない。

それに、SNSであれば色んな地方や、海外のレースなどの情報も入ってくるので、世の中にはいろんな大会があるものだなあと見識を広げられるのも良い。

知ったからと言って遠方のレースにエントリーすることはなかなかままならないにしても、旅行ガイドを見るのと同じで、こんなレースにいつか出てみたいと思いを馳せることはできる。

 

とはいえここでも驚くのが、デル充のみなさんの大会参加頻度の高さだ。

トライアスロンは特に大会エントリー費が高い。オリンピックディスタンスでも1~3万円、ロングならもちろんさらに跳ね上がる。

私などは例年、冬の終わりころから春にかけて、限られた予算と参加費とスケジュールを並べてどのレースにエントリーすべきかを吟味することになる。やはり少しでも参加費のリーズナブルな大会はありがたい。

 

デル充には年間のレース参加スケジュールを公開する強者もいる。中にはシーズンになると毎月のようにレースにエントリーする人もいたりして、その合計費用をざっと計算して溜息を禁じえない時も、ある。

 

 

市民アスリートのSNSにみられる症状④ 「イタ充」

「また、膝をやってしまいました。しばらく走れないかもです」

「ランに入ってすぐに腰の痛みで歩いてしまいました。残念」

市民アスリートは怪我とも戦っている。常にどこかが痛い。イタ充。

 

私も膝やら腰やら足首やら、あちこちに痛みを抱えているので、こういった投稿を読むと共感を覚えるし、それこそ痛いほど気持ちが分かる

中には読んでいていたたまれないものもある。体の不調は人から競技を奪ってしまうこともある。痛いのは構わないが、走れなくなるのはとても困る。

 

なので、見ず知らずの他人がどこそこを痛がっているなどおよそどうでもいい話ではあるものの、そういうのを共有できるのもネット上コミュニティの利点ではある。アップする方も、それを読む方も、場合によっては励まされたり安心したりということがあるように思う。

 

 

リア充よ永遠に

日々がんばってSNSを更新しているアスリートの皆さんをディスるようで少し気が引けたが、決してディスっているわけではない。

多くの人が持てる時間とお金と情熱を競技に注ぎ込んでいるのを目の当たりにすると、そこまでコミットできていない私としてはただただ脱帽するしかなく、尊敬と羨望とほんの少しのやっかみを込めて記事にしてみた次第である。

 

ところでこのリア充という言葉。

あまり字面も良くないし、もともとネガティブな発想で生まれた言葉なので、やはりこのまま廃れていく言葉なのだろう。

まあ、それこそどうでもいいことではあるが。