試合前の食事。
一昔前の中学校の部活だったら、「明日は試合か。だったら今晩はカツ丼だな」といった具合に、ゲン担ぎ程度にしか考えられていなかったではないでしょうか。
しかし本気でパフォーマンスのことを考えるのならそうもいきません。
ましてやマラソンやトライアスロンのような長丁場のレースとなれば、最後までエネルギーを枯渇させず、ゴールの瞬間まで体を動かし続けるには食事によるコンディション作りが必要不可欠と言えます。
この記事では、
- レース前の1週間
- レース前日の夕食
- レース当日の朝食
- レース直前
という時間軸に沿って、最高のパフォーマンスを発揮するためにはいつどのような食事を取るべきか、について整理していきます。
それぞれの項で要点となるポイントをまとめていますので、参考にしていただければ幸いです。
その前に-レースに向けた食事で不可欠な糖質の話
レース前の食事で基本となる「糖質」の話を、まず少しだけしたいと思います、
面倒な話はスキップして具体的な話だけがいい、という方は次の「レース前1週間の食事」からどうぞ。
レース前の食事について、漠然と「よし、レースが近いから炭水化物をたくさん取ろう」と考える方は多いと思います。
炭水化物とは「糖質+食物繊維」のことです。
このうち糖質は、体を動かすためのエネルギー源となるので、炭水化物を多めに取ろうという考え方は基本的に正解です。
糖質はごはんやパン、麺類、いも類などに多く含まれ、主に主食として食べられます。
運動のエネルギー源は主に糖質と脂質で、運動はこれらのハイブリッド制御で行われます。
ガソリンと電気で動くハイブリッド車に似ていますね。
糖質がガソリン、脂質が電気だとすれば、レース前に糖質を蓄えることは、ガソリンを満タンの状態にしておくようなイメージです。
摂取した糖質のうち、すぐに使わず体内に備蓄されるものをグリコーゲンと言います。
なので糖質を蓄えるということは、グリコーゲンを備蓄することと言い換えることができます。
グリコーゲンは肝臓と筋肉に貯蔵されますが、脂質よりも貯蔵量が少なく、マラソンやトライアスロン
など長時間動き続けるスポーツの場合、終盤に枯渇する恐れがあります。
そのため、グリコーゲンをあらかじめ十分に備蓄しておくことは、持久系競技のレースに臨むうえで非常に大切が位置づけとなるのです。
レース前1週間の食事
糖質がエネルギーとして消費できるようになるには時間がかかります。
糖質の種類にもよりますが、ご飯の場合で1,2日かかります。
ということは、前日の夜や当日の朝に食べればいいというものでもなく、事前の準備が大事だということになりますね。
レースが近づいてきたら、エネルギー源となるグリコーゲンを備蓄するために、糖質を多めに摂取するようにします。
ご飯やパン、パスタなどの麺類、いも類などを普段よりたくさん食べるようにします。
レース前1週間のグリコーゲンの備蓄には、「カーボローディング」という具体的な方法があります。
カーボローディングについては別記事で詳しく説明しますので、こちらもあわせてお読みください。
レース前1週間は体を休め、グリコーゲンの消費を抑えるためにも、練習量は落とすようにします。
すると消費カロリーが減るわけですが、食事面では炭水化物の摂取量が増えています。
従ってこの時期は太らないように注意が必要です。
体重増加はそのまんまレースでの負荷になってしまいます。
2キロ増えたら、2キロのダンベルをぶら下げて走っているようなものなので、しゃれになりません。
炭水化物を増やしたら、その分脂質や他のおかずを減らすなどしてバランスを取るようにしましょう。
一方、この時期はグリコーゲン備蓄のほかにも、
- 練習の疲れを取る
- 風邪などで体調を崩さない
- 便通をよくする
といった点にも気を配る必要があり、他の栄養素もバランスよく取っておきたいところです。
疲労回復の観点では、たんぱく質は常に一定量取る必要があります。
ビタミンB群やミネラルが豊富な豚肉がおすすめです。
ビタミンB1,B2,B6は疲労回復効果があり、皮膚や粘膜、筋肉の生成を助けます。
また老廃物を排出するカリウムや、酸素を体中へ運ぶ元となる鉄分も多く含みます。
便通をよくしておくためには食物繊維を取りましょう。
豆腐や納豆などの大豆製品などは、たんぱく質と食物繊維を一緒に取れるので効率的です。
・レース3日前くらいから糖質を多めに取る
・食べ過ぎない
・たんぱく質を始め、ビタミン・ミネラルなど他の栄養素もバランスよく取る
レース前日の食事
前日だからと言って特別な食事にする必要はありません。
引き続き高糖質食なので、比較的消化の良いパスタなどの麺類で糖質多めのメニューに設定すると良いでしょう。
消化の悪いもの、普段食べなれていないものは避け、また食べ過ぎにも注意しましょう。
前日ということで生ものは避けておいた方が無難です。
また食物繊維も、ガスが出やすいので前日からはあまり取らないようにします。
アルコールは極力飲まないほうが良いでしょう。
アルコールの摂取は内臓(特に肝臓)にも負担がかかり、本番でのパフォーマンスに影響します。
普段飲むお酒の代わりに、クエン酸が豊富な100%オレンジジュースなどが良いですね。
ただし、いつも飲んでいる人が、レース前日だけ飲まずに眠れなかったりするのも困ります。
マラソンやトライアスロンの大会では、普段より早く寝て早く起きるのが普通なので、どうしてもなかなか寝られないという人は多いのではないでしょうか?
個人的にですが、私はビール350ml缶1本、ワイン200mlくらいまでなら飲んでもOKと自分で決めています。
この点は個人差があるので、あくまで自己責任ですが。
・消化の良い主食で高糖質メニューにする
・食べなれていないもの、生もの、食物繊維は避ける
・お酒は飲まないか、ごく少量にする
レース当日の朝食
さてここからは特に、食べる時間にも注意を払っていく必要がありますね。
レース当日の朝食は、遅くともスタートの3時間前までに取るようにしましょう。
直前にゼリーやバナナなどで補給する場合もありますが、しっかりした食事という形では、3時間前には食べ終わっているようにします。
注意点は前日の食事とあまり変わりませんが、基本的に高糖質食で、消化の良いものを選び、食べなれていないものや食物繊維などは避けます。
主食はおにぎりや麺類など、たんぱく質は低脂肪高たんぱくの鶏ささみや、ゆで卵などがおすすめです。
・3時間前までにしっかり朝食をとる
・消化の良いものを選ぶ
・糖質はパスタなどの麺類、おにぎりなどでしっかり
レース直前の補給
朝食からスタートまでに時間が空いてしまう場合など、準備運動を始める前に軽食を入れておきたいということもあります。
おにぎりやバナナなどの固形物は消化に一定の時間がかかるので、スタートの1時間前までに食べ終えておきたいです。
ゼリー系の補給食などであれば、スタート30分前くらいまで大丈夫です。
レース中に空腹にならないかという恐怖心もあり、ついここで食べすぎてしまうのは危険です。
消化が間に合わず、最初のスイムでお腹が痛くなるなど失敗のもとです。
トライアスロンは長丁場なので、オリンピックディスタンス以上なら途中で補給を入れることを前提に考えれば良いのです。
・おにぎりやバナナなどの固形物は1時間前までに
・ゼリーやジェルなどの補給食は30分前までに
レース前の適切な食事で最高のコンディショニングを
いかがでしたか?
レース前の食事、それほど特別なことをするわけではありませんが、ちょっとした注意や気遣いでコンディションが変わってくることもあります。
全体を通しての要点を下に挙げます。
- 高糖質食にする
- 食べなれないものは避ける
- レースが近づくにつれ生もの、食物繊維、消化の悪いものは避ける
- 朝食はスタート3時間前まで、固形食は1時間前まで、ゼリーなどは30分前まで
ほとんどの方にとって、レース出場は年に多くても数回程度、大事な大事なイベントです。
せっかくトレーニングをして、参加費を払って、スケジューリングをして挑むのですから、できる限り最高の状態で迎えたいものですよね。
食事はそのためにできることの1つです。
レースを楽しむためにも、いい結果を残すためにも、できることを確実にやっておきましょう。