トライアスロンと年齢の話ートライアスリートの平均年齢、始める年齢、年代別タイムなど

トライアスロン愛好者の平均年齢が比較的高めであるということはもう皆さんお気づきのことでしょう。

また30代40代になってから始める人が多かったり、60歳を超えるトライアスリートが少なくないこともご存じのことと思います。

 

では実際にその平均年齢年齢分布始める人が多い年齢層はどれくらいなのでしょうか。

この記事ではそれらを実際のデータで紹介するのと同時に、個人的に気になっていた年代別の平均タイムなどを独自に集計してみました。

この記事を読むと、トライアスロンのエイジグルーパー(アマチュア競技者)における、

  • 競技者の平均年齢と年齢分布
  • トライアスロンを始めた年齢
  • いつまで競技を続けようと思っているか
  • 年代別の平均タイム

などが分かります。

 

トライアスリートの平均年齢と競技を始めた年齢

日本トライアスロン連合(以下JTU)の調べによると、トライアスロン愛好者の平均年齢は約42.7歳です。

これはJTUの「2015年トライアスロン動向」という資料に記載された情報で、2014年の南紀白浜トライアスロン大会参加者へのアンケートに基づいているということです。

出典:JTU「2015年トライアスロン動向」

 

また同じくJTUが行ったアンケートによると、トライアスロンを始めた平均年齢は35.6歳であったそうです。こちらは1年さかのぼって「2013年JTUトライアスロン動向調査」という資料で公開されている情報です。

出典:JTU「2013年JTUトライアスロン動向調査」

 

競技開始の平均年齢が30代半ば、競技者の平均年齢が40代前半ということです。ただこれはあくまで平均年齢なので、全体的な傾向を知るには年齢分布を見てみたいと思います。

 

では年齢分布はどうなっているのか?

出典:JTU

 

グラフは前出の「2013年JTUトライアスロン動向調査」からで、2つの主要大会の参加者から集計したものです。まず、多くの大会でエイジグルーピングが10代から70代になっていることでも分かるように、参加者は10代~70代までと幅広いです。

参加者が多い年齢層は30歳から54歳までのグループと言っていいでしょうか。いずれのグラフも40代前半をピークに、比較的きれいな山型をしています。

 

若年層側を見ると、25~29歳のグループから、30~34歳のグループへは人数が倍増しています。これは30代半ばで始める人が多いというデータともマッチしますね。

逆に50~54歳のグループから、55~59歳のグループへは人数が半減しています。この辺りになると体力の限界を感じて競技をやめる人が多くなってくるのかもしれません。

 

平均値と分布からするとざっくり、「多くの人が30代半ばで始めて、40代がもっとも盛んで、そして50代のどこかやめていく人が多い」、という構図が見えてきますね。

 

トライアスロンの年代別(エイジグループ別)の平均タイムは?

トライアスロンをやってる人の年齢層に関する情報は多くありますが、年齢ごとのタイムをまとめた情報はあまり見つかりません。個人的には結構気になっていた点なので、公開されているある大会のデータから独自に集計、分析をしてみました。

 

下記のグラフが男子と女子の総合タイムを、エイジグループ別にプロットしたものです。

データは関東最大級の大会の完走者約830人(男子約770人、女子約60人)を対象にしています。男子の方は分析に十分な人数かと思いますが、女子の方は少ないのでデータにばらつきが大きく、参考までです。

横軸はエイジグループ別になっています。縦軸は総合タイムなので、点が下にあればあるほどタイムが短く、上に行くほどタイムが長いとなります。青の実線が実際のデータで、赤の点線はざっくりした傾向を分かりやすくするためにならしたもの(二次近似曲線)です。

 

男子のグラフに注目すると、若年層で若干ばらついているものの、基本的には若いエイジグループほどタイムが短くなっています。そりゃ若い方が早かろうという気もしないではありませんが、トライアスロンに関してはここがどんな曲線になるのか正直よく分かりませんでした。30代くらいの方が経験も積んで脂がのって速い可能性もと考えましたが、始める人が多いということは初心者の割合も多くなり、平均タイムを引き下げている可能性もあります。

赤点線を見ると、わずかではありますが20代から30代にかけての曲線は傾斜が緩く、それに比べると中年から高齢にかけてはやや勾配がきつくなっています。これは若い年代では年齢によるタイムの差が出にくいものの、歳が上がってくるにつれ、年齢とタイムの相関が高くなっているとも言えるのではないでしょうか。なんだかんだ言っても歳には勝てない、ということですね。

 

もう少し踏み込んで見てみます。これは男子のみのデータですが、スイム/バイク/ランの種目別です。

まず目立つのはスイムですね。近似線で見るとやや若年側が低くなってはいるものの、年代間の差が出にくいようです。ばらつきも大きく、スイムは年齢ではなく個人差が大きいということが言えそうです。

バイクとランの傾向は総合の傾向と酷似しています。バイクとランのスキルレベルは似通っていて、さらにそれが総合タイムに直結するということが分かります。逆を言えばスイムは総合タイムにはあまり影響しないようだということも示しています。

 

トライアスロンは何歳まで続けられるのか?

年齢分布から50代でやめる人が多そうだという話をしましたが、トライアスリート自身がいつまで続けられると考えているのかはまた少し異なるようです。

 

前出のJTUの調査資料の中に、「継続意思年齢」の調査結果があります。

これは今現在トライアスロンの愛好者である人たちが、何歳まで競技を続けられると考えているかという調査です。2大会の参加者へのアンケートの平均値を取ると、結果は63.7歳ということです。

多くの人が60歳を超えてもしばらくは続けられると考えているということですね。

 

しかし実際年齢分布をみると60代以降の参加者はかなり少なくなっているので、この63.7歳という数字には現役トライアスリートの願望が込められているように感じられます。生涯スポーツと言われるランニングや水泳、中年以降から始める人も多いサイクリング、これらを足し合わせたトライアスロンの平均年齢が高いのはうなずけますが、60歳を超えても続けていくのはやはり簡単なことではなさそうです。

 

世界最高齢のトライアスリート、稲田さん

せっかくトライアスロンと年齢の話をしているので、世界最高齢のトライアスリートとして知られる稲田弘さんについて軽く触れたいと思います。というかトライアスリートと年齢の話をして、この方を語らずして終えることはできないでしょう。

 

出典:東海テレビ NEWS ONE

 

稲田さんがトライアスロンデビューしたのは70歳のこと。コナのアイアンマンに初出場したのが79歳。以後複数回コナを完走し、2016年と2018年の年代別優勝は世界記録として認定されています。

その稲田さん、現在は90歳になられていますが今なお現役トライアスリートとして活動しています。

 

ここまで、トライアスリートの平均年齢が40代半ばだとか、30代半ばで始める人が多いだとか、50代半ばくらいでやめていく人が多そうだという話をしてきましたが、稲田さんの場合はいずれにも当てはまらずまさに異次元です。

例えば上で紹介した動画の中で稲田さんは「トレーニングを休む日は基本的に無い」という話をされていました。現在のご年齢から放っておくと筋力が急激に衰えてしまうなど、「休みを取ると体がダメになるから」というのがその理由だそうです。

一般的な常識では休養日は取った方が良いということが言われます。例えば週に1日は完全休養の日を取るなどですね。しかし上記の稲田さんの言葉は90歳という年齢だからこその哲学があるんだなと感じさせます。普通の常識で測ってはいけないものがそこにはありそうです。

 

稲田さんはおそらくフィジカル的に元々かなり恵まれたものを持っていて、同じようにやったからと言って90歳でトライアスロンをやれる人はそうそういないでしょう。しかし稲田さんはギフトに恵まれた特別な人と考えるのもまたちょっと違う気がします。話を聞いていると、稲田さんが誰よりも年齢に抗って、身体を衰えさせないための方法というのを誰よりもよく考えているのだということが分かるからです。

 

トライアスロンと年齢の話を総括すると…

さて今回はいろいろとデータを見てきました。

最後にもう少し稲田さんの話になりますが、動画の中で「80歳の時はまだ若くて体も絶好調だった」というコメントがありました。これも異次元の発言ですね。

でもそこで思うのは、ある意味では稲田さんも他のトライアスリートも同じように、目的を満たすための挑戦をしているだけなのかなということです。

 

誰もが年齢なり、身体の不具合なり、怪我なり体質なり、何かしらの課題を抱えています。年齢もその課題の1つですが、年齢だけが特別ではないとも言えないでしょうか。例えば若くても膝を故障して思うように練習ができなかったりパフォーマンスを伸ばせなかったりするのです。

”今の稲田さん”にとっては90歳という年齢こそが対処すべき、あるいは挑戦すべき課題である、ということではないかと思います。

つまりアマチュアトライアスリートにとってのトライアスロンはやっぱり自分との戦いということです。稲田さんが86歳でアイアンマン完走したとか、90歳でも現役で競技しているとかは、他の人にはきっとあまり関係が無いのです。

稲田さんも何かと戦っていて、すべてのトライアスリートはそれぞれの何かと戦っている。誰にでもそんな挑戦をさせてくれて、そしてまたそれを乗り越える喜びを与えてくれる、そんなスポーツだから多くの人がトライアスロンという競技に惹かれてしまうのではないでしょうか。