トライアスリートに一番人気のサドルと言えば、おなじみism(アイエスエム)のサドルです。
今日はismのサドルからトライアスロンにおすすめのモデル紹介と、そのうちの1つ「PS1.1」についてレビューしたいと思います。
トライアスロンのサドルと言えばism(アイエスエム)
トライアスロンバイクにおけるismのサドルの位置づけは、2013年以降アイアンマンチャンピオンシップでの使用率ナンバーワンを維持しているという事実が語っています。
ismのサドルと言えば先端をぶった切った大胆な形状が特徴です。まずはこの見た目で他のブランドから差別化されており、トライアスリートのポジティブなマイノリティ感と相まって人気を押し上げているようにも感じられます。
ism自体はトライアスロン専用のサドルブランドというわけではなく、スポーツ車以外にもそれこそママチャリサドルのようなものも作っています。いわゆるコンフォートタイプのサドルであっても先端が二股に分かれた形状は一貫していて、そこには明確なブランドポリシーが感じられます。
トライアスロン専用ではないとは言え、公式サイトにある提供アスリートのページには、IMシリーズで活躍するトライアスリートたちがエアロポジションでバイクにまたがる写真ばかりが並んでいます。メインのターゲットは前傾姿勢で長時間自転車に乗る人たちである事がうかがい知れますね。
ismはアメリカのフロリダ州に本社を置くメーカです。公式サイトにもあまり会社の紹介のようなものはなく(多くのメーカがHPで自社の歴史から語りたがるのに対し)どこか職人気質を感じてしまいます。
フロリダと言えばアイアンマンシリーズの開催地でもあります。ロングのトライアスロン人口も多いはずなので、やはりそういったところが創業の起源なのだろうと推察されます。
ismサドルの種類と選び方
ismサドルにはたくさんのモデルがありますが、用途や競技性によって比較的システマティックに選択できるようになっています。
「カテゴリー」と「パッド厚」を選ぶことで、お目当てのサドルがだいたい絞り込めてしまいます。それぞれ見ていきましょう。
サドルのカテゴリーを選択
ロードバイク向けのカテゴリーには、下記の画像に示される4つがあります(下に日本語でも説明します)。
出典:ISM Saddles | Bike Seats for Comfort and Performance (ismseat.com)
以下、ざっくり日本語で。
- PS (Performance Short)
- 特徴:ショートノーズ。トップが曲線形状でエアロポジション時のサポートがしっかり
- 主な用途:トライアスロン、TT、ロード
- こんな人におすすめ:前傾姿勢を取るトライアスロンやTTのレースに出場する人
- PL (Performance Long)
- 特徴:全長長め、リア側には幅を持たせた設計
- 主な用途:ロード、クライミング
- こんな人におすすめ:ポジションを前後に移動しやすく、クライミングに最適
- PN (Performance Narrow)
- 特徴:幅狭形状のため、ペダリングを邪魔しない設計
- 主な用途:ロード、トライアスロン、TT
- こんな人におすすめ:ペダリングの快適性を重視する人
- PR (Performance Recreation)
- 特徴:形状はPSと同じで、よりパッドに厚みを持たせたモデル
- 主な用途:ハイブリッド、マウンテン、トライアスロン
- こんな人におすすめ:ロングのトライアスロンなど、長時間のサイクリングを快適にしたい人
いかがでしょう? だいたい選べそうな気がしてきませんか?
PLはトライアスロンというよりクライミング向けの色が濃いですね。トライアスロンで使うなら、ショートノーズ派はPS、ペダリング時に内腿がサドルに擦れるのが嫌だという人はPN、痛みの軽減など快適性を重視する人はPR、と言ったところでしょうか。
パッドの厚みを選択
ismのパッドの厚みは、「**シリーズ」という呼称で分類されます。**には数字が入り、数が大きい方がパッドが厚いということになります。
それぞれのカテゴリー(ここではトライアスロンに向いているPS, PN, PR)で用意されているパッド厚は現在以下のようになっています。
- PS:15/30シリーズ
- PN:25/30/40シリーズ
- PR:40/50/60シリーズ
全体として、30か40辺りを中心にして、15や25は薄めのパッド、50や60は厚いパッドという感じですね。ただ30くらいでも他メーカに比べるとパッドは厚めと考えて良いかと思います。後述しますが、レースでも使うなら40くらいまでの厚みが良いのではないかと個人的には思います。(もちろん、ロングに出るにあたってとにかく快適性を重視したい、という場合はその限りではありませんが。)
ism PS1.1の乗り心地レビューなど
さて全体の紹介を終えたところで、現在筆者が個人的に使用しているのがPS1.1です。
PS (Performance Short)なのでショートノーズタイプで、1.1のパッド厚は30シリーズになります。3つのカテゴリーの中でももっともトライアスロンに寄せているのがPSであり、平均的なパッド厚の30なのでおそらくトライアスリートのボリュームゾーン的なモデルだと思います。
今回、シマノプロのエアロフューエルというトライアスロン向けサドルからの乗り換えになりました。エアロフューエルもとても良いサドルだったのですが、尿道圧迫からくる痺れはある程度ありました。
ismのPS1.1では、この痺れはほぼ無くなったと言っていいと思います。久しぶりに自転車に乗った時にだけ少し痺れを感じることはありましたが、やはり二股形状の効果は抜群でした。エアロフューエルも広く穴の開いた圧迫の少ないサドルなので、それと比べても大きく改善したのはさすがismと感動しました。
また前述した通り、30シリーズでもパッドはかなり柔らかく感じ、エアロフューエルと比べても沈み込むような感覚がありました。サドルの高さは(沈み込みの分)実測よりも若干高めにセッティングする必要がありました。
トップの形状がお尻を包むようになっているのでフィット感が良く、ブラケットを持つポジションでも、DHポジションでも非常に安定した状態でペダリングができました。ノーズの幅がある方なので、内腿は若干サドルとこすれる感覚があります。私はあまり気にならないのでまったく問題なく使えますが、もともとペダリングがサドルに邪魔されるのを嫌う人は、PNカテゴリーを選ぶのが無難ではないかと思います。
トライアスロンバイクにおすすめ、ismサドルのPS1.1
さて、ismサドルについて僭越ながら語ってみました。
たくさんモデルがあるismサドルですが、自分の用途と競技性を元にカテゴリーとパッド厚を選んでいけばおのずとお目当てのサドルは見つかるよう、よく商品設計されているように思います。
今回は個人的に購入したPS1.1を推していますが、PN3.0(パッド厚30シリーズ)やPR2.0(パッド厚40シリーズ)もトライアスリートのボリュームゾーンとしておすすめです。
最後に1つ、PSとPRカテゴリーのサドルは、サドル後部がバイクハンガーに引っ掛けられるような形状になっています(PNシリーズはそうなっていない)。トライアスロンのトランジションを意識したもので、トライアスロンに寄せてくれている設計がうれしいです。個人的にはPS1.1を選ぶ時のモチベーションの1つにもなりました。迷った時の一要素として参考にしていただければと思います。