コロナ後ようやく再開されたトライアスロンレースに出場して思ったこと

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先日ようやく今年初めてのレース出場を終えることができた。

今シーズン初であり、今シーズン最後ということにもなった。

またそれはコロナ後初のトライアスロン出場でもあり、今年2月以降ほとんどすべての大規模イベントが中止や延期となる中、初めてのスポーツイベントへの参加でもあった。

 

新しい生活様式という言葉が既に陳腐化しはじめた今日このごろ。

イベントでの感染対策は、そして参加者の反応はどのようなものだったのか。

そして大会は、従来のように楽しむことができるものであったのか。

そんなこんなについて、レース出場を通して思ったことなどを記しておきたい。

 

 

10月になってようやく開催され始めたトライアスロン大会

シーズン前にコロナウィルスが猛威をふるい始めた今年、一般参加可能な国内のトライアスロン大会は、シーズンも終盤になってようやく開催され始めた。

関東では川崎港トライアスロンと潮来トライアスロンが10月4日に開催、翌週10月11日には九十九里と、何とかシーズン中にと10月開催勢が奮闘してくれた。

 

プロ野球やJリーグの観客数も徐々に制限緩和の流れにあるし、聞くとことによるとマラソン大会などもぼちぼち始まってきているとのこと。

それでもスポーツイベントで大きなクラスターが発生したというニュースは耳にしていない。

Jリーグを観に何度かスタジアムにも足を運んだが、マスク着用率や歓声を上げないルールの順守などには日本人のモラルの高さがうかがえ、警戒心と安心感の良いバランスが保たれているように感じられた。

これは非常に良い流れにある。

 

10月5日のニュースによると、東京マラソンは2021年大会の規模を縮小せず、開催日を春から秋に延期することに決めたらしい。

たしか2020年の出場権を持つ人は2021年大会に出場できるという話だったと思うので、参加者を減らすことは現実的に難しかったのだろう。

決定が時期尚早な気もするが、巨大な大会だけにそこは致し方ないのかもしれない。

 

そんな中トライアスロン界ではエリート大会が一足先に再開している。

ドイツ・ハンブルクのWTS(ワールドトライアスロンシリーズ)や、チェコ・カルロヴィヴァリのWC(ワールドカップ)はTriathlon Liveでも中継を見ることができたが、多くのトップ選手が出場していて、実績ある選手が上位に食い込み順当な結果であるように見えた。

コロナでトレーニング環境にもいろいろ制限があったはずだが、再開してすぐに結果を残せるというのはさすがトップ選手だなあと感心してしまう。

 

そしてこの10月には複数の国内大会が、コロナ禍の中ほとんど先陣を切るような形で一般参加のスポーツイベントとして開催された。

どの大会も、開催条件やルール変更などについて何か月も前からHPやSNSを使って情報発信を繰り返してくれていた。

そのため我々にも、この状況下でイベントを開催することの苦悩をうかがい知ることができたし、また競技性を損なわないままクラスターを絶対に発生させないという感染対策を立案することの困難さも想像することができた。

 

トライアスリートは1年にせめて1回くらいはレースをしないと鬱病にだってなりかねないので、今シーズン中に大会が再開し始めたのは非常にありがたい事だった。

主催者や関係団体、ボランティアスタッフの方々には声を大にして感謝を述べておきたい。

 

 

スイム直前までマスク、フィニッシュ後すぐにマスク

さて私が参加した川崎港トライアスロンin東扇島の話に移る。

今回カテゴリがオリンピックからスプリントに変更されたほか、コロナウィルス感染対策として数多くの決まりごとがあった。

 

もっとも象徴的なのがマスクの着用のルールだ。

会場内ではレース中以外は着用ということなのだが、

  • スタート前:試泳に入る前まで着用し、入水直前に砂浜に用意されたごみ箱にマスクを捨てる
  • フィニッシュ後:ゴールしたら直後にペットボトルの水と一緒に渡されるマスクを着用する

という決まりになっていた。

 

つまり、競技中だけは仕方ないけどそれ以外は本当にずっと着けていてくださいね、ということなのだ。

ウェットスーツとゴーグル姿でマスク着用した選手が集合している様子は、これまでの大会ではありえないなかなかシュールな光景だった。

 

このルールは何もこの大会のユニークなものではなくて、海外で行われたエリートレースでも見られたものだ。

前述のWTSやWCの映像を見ると、スタート直前に名前をコールされたエリート選手たちが順々にマスクを外してスタート位置に向かう姿があった。

つまりこれが現時点での世界的スタンダードだとも言える。

そんなわけで、一般のレースでもこの方式が踏襲されたのである。

 

このルール、はっきり言ってしまえばやりすぎな気もする。

スタートを分散して行っているので招集エリアは大して密になっておらず、またレース中の密集がいずれ避け切れないものである以上、ぎりぎりまでマスクを着けていることにさほど意味があるようにも思えない。

おまけに10時を過ぎて気温が上昇する中、スタート地点の密を避けるためということで結構待たされたので、汗を吸ったマスクを着けて浜に立っているのはレース前の高揚を若干阻害するものでもあった。

 

ただ、それでいいのだと思う。

そこまですることが必要かどうかという議論はあるが、今はまだそこにこだわるべきではないように思う。

開催できること、クラスターを出さないこと、その実績を積むことが大事な時期なので、対策は思い切って安全側に、そして世間に認められる側に倒してしまっていいのだと思う。

 

繰り返しになるが、コロナ後ほとんど先陣を切るような形で一般参加のイベントを開催したのだから、手探りの部分がかなり大きくて当然である。

スタートも8秒に1人ずつのタイミングスタートで、時間がかかったし待たされもした。

スイムコースが周回なので、タイミングスタートとは言えそれなりに密集してしまう。

なので効果がどれだけあるかは分からないが、とにかく対策としてできることはやっておく、という姿勢が大事なんじゃないかと思う。

後から、そこまでする必要なかったね、ってことになったらそれはそれでいいのだ。

 

 

対策の徹底と競技性とモラルと

マスク着用を始め、公共の場での感染予防の話はモラル云々と合わせて語られることが多い。

複雑な問題ではあるが、ウィルス感染に関して言えば目にも見えず命にかかわる場合もあるので、どうしても個人のポリシーとかは分が悪い。

 

川崎港ではどうだったかというと、まず会場に着くと当然のように選手も観戦者もマスクを着用していた。

日本では日常的に意識の高い人が多いが、こうしたイベントとなると輪をかけてそれが感じられる。

気温が上がって暑くなってくると、移動中や周囲に人がいないなど一般的に外していいとされる状況では外している人が増えてはきたものの、それらは十分に常識の範疇であり、やはりマスク文化がずいぶん定着したなという感じを受けた。

 

またマスクの他にも、痰や唾を吐かないというルールもあった。

これはほとんどランを意識したルールだと思うが、こちらもおおむね守られていたように思う。

ただ川崎港ではランコース内にユスリカのような羽虫の多いエリアがあって、厄介なことにこれが目や口に入ってきたりする。

口に入った場合は唾と一緒に吐き出さざるを得ないわけで、フィニッシュ後にそのことを愚痴りあう選手たちもいた。

とはいえ口に入った羽虫を吐き出すことにとやかく言う人もいないと思うので、これについてはただの余談である。

 

一方で、これはさすがに意識が低いと言わざるを得ないという場面もあった。

ランの途中、私の前を走っていた選手がエイドで水を取り、口に入れた水を吐き出した。

そのこと自体を糾弾しようという気はさらさらないのだが、その選手はコース外に吐き出すのではなく、自分の足元に、つまりすぐ後を走っている私にも飛沫がかかりかねないような格好で吐いたのだ。

 

全然気にならないという人もいるかもしれないが、私はこれがかなり気になる。

感染対策としてどうのというより、これはそれ以前のモラルだと思う。

今回に限らず後ろを確認もせずに口に含んだ水を吐き出す人には辟易としていたのだが、このコロナ禍の中にあってもまだそれをやるか、と呆れてしまった。

競技に夢中になるのはいいが、最低限のマナーというのは守っていただきたいものだ。

 

 

わずかに、そして確かに薄れる「競い合ってる感」

レースをしていて、従来と比べてわずかに違和感を感じるところがあった。

少し先入観も入っているかもしれないが、どこか、みんなで一つのレースをしている感じがしないのだ。

 

今回の大会ではまず、レースナンバーの下1桁でグルーピングしてスタートに招集された。同じグループの中は年齢もまちまち、実力もまちまちである。

さらに試泳を終えた順から自由に列に並んでのタイミングスタートなので、結局スタート順はほぼ完全にランダムとなっていた。

 

同時スタートの大会であれば、例えばバイクである選手に抜かれたとすると、スイムではその人より自分の方が速かったのに、ああこの人はバイクが強いんだなとか、そんな風にして周りの選手たちとの対比を感じることがある。

周回遅れを除けば、レースが進むにつれ周囲には近いレベルの人が多くなるので、ライバルたちと競い合ってる感が少なからず生まれたりする。

スイム、バイク、ランの3種目があってそれぞれ得意不得意があり、バイクで抜かれた人をランで抜き返したり、そうしたレースの臨場感がある。

 

今回のレースではそれがほとんど感じられなかった。

そこで想起されるのがレースのリモート開催というやつである。

色んなことがリモートで行われる昨今、ネットワークを介してレースもリモートでやってみようという取り組みである。

今回の大会がそれに近かったとまでは言えないが、従来に比べるとややリモートレース寄りの、個人個人でやってるという感じがどこかしてしまったのは否めない。

そこのところはちょっと寂しい気がしたので、今後の課題と言えるのではないかな思う。

 

素人考えではあるが、今回のような形式にするなら、ざっくりでも持ちタイム上位順でスタートするようにグルーピングできればいいのではないかと思う。

早い順にスタートするとレースが進むにつれ全体的に差が広がる方向になるが、その方が選手同士の近接のリスクは減る方向にもなる。

何よりレベルの近い選手との同時性が高まるので、レースを競ってる感はより感じられるような気がする。

 

 

コロナ後初のレースに出場した思ったこと – あとがき

いろいろ書きはしたが、コロナ後初めて出場した川崎港トライアスロンは十分満足できるものだった。

対策はよく練られていたし、スタートもよくマネージメントされていて、待たされはしたが混乱のようなものは一切なかった。

スタッフも大勢いたし、こんな状況下でもレースに参加できたことにはやはり感謝しかない。

 

東京オリンピックが延期になって、今年は大会は無理かなと思っていた。

10月になってようやく開催されたレースに出場して改めて思ったことは、年にせめて一度くらいは、本番に向けてきちんとコンディションを整えて、当日に万全の体を作るような体調管理をする時間がやっぱり必要だよな、ということだ。

長らく家族だけで過ごしているとなんとなく部屋の片付けもおざなりになってくるのだが、そんな時夕食かなんかでゲストを招くことになると、それに向けて必然的に部屋を片付けることになってリセットされる。

なんだかそれに似ている気がする。

 

当面のイベントはこんな感じで模索しながら、感染対策との両立をしていくことになるのだろう。

もちろんクラスターを出さないことが重要ではあるけど、対策にはまあポーズのような部分もあるので、十分に受け入れられる対策を見せつけたうえで、したたかに楽しんでいくことができればいいと思う。

その辺のバランスが、今後徐々に最適化されていくんだろうな、と思う。