オリンピックのトライアスロンが注目を集めるなか、トライアスロンという競技自体への
関心も今まで以上に高まってきています。
51.5kmを競うスタンダードディスタンスのことをオリンピックディスタンス(OD)と呼ぶほどですから、オリンピックはトライアスロンの国際大会の中でも最高峰のものであることは間違いありません。
しかしオリンピック以外にも、毎年多くの国際大会シリーズが開かれ、日本人も健闘し、好成績を収めていることはあまり知られていません。
なので今回は、ODで開かれるオリンピック以外の国際大会について記事にまとめたいと思います。
ITUワールドトライアスロンシリーズ(旧世界選手権シリーズ)
ワールドトライアスロンシリーズ(WTS)は、ITU(国際トライアスロン連合)によって開催される、オリンピックの次に権威のある大会です。
初回は1989年8月6日にフランスのアヴィニョンで開催され、男子はアーク・アレンが1時間58分45秒で、女子はエリン・ベイカーが2時間10分00秒で優勝しました。
当初はシリーズという形を取っておらず、年に1回、1発勝負の大会でした。
2009年からは現在のようなシリーズ制になり、世界の複数都市で3月~9月にかけてレースを行い、最終戦はGF(グランド・ファイナル)と呼ばれています。
2019年現在、シリーズは7都市+1都市(GF)の計8大会(リレーのみで開催される大会は除く)。
日本では、東アジア唯一のワールドシリーズとして横浜が会場になっており、2009年以降ほとんど毎年開催されています。
2019年は5月18日にエリート男子・女子のレースが行われ、女子では高橋侑子選手が4位という活躍を見せてくれました。
ちなみに横浜大会翌日には、一般のトライアスリートも参加できるエイジグループの大会も同会場で開かれています。
WTSでの日本人最高成績は、2016年の上田藍選手です。
この年、上田選手はシリーズでコンスタントに好成績をあげ、シリーズランキング総合3位という快挙を成し遂げました。
男子も含め、WTS総合での日本人メダリストは上田選手のみです。
まだまだトライアスロンで世界の壁は厚いですね。
2019年のWTS開催都市は以下の通り。
- 3/8,9 アブダビ(UAE)
- 4/27,28 バミューダ諸島(イギリス領バミューダ)
- 6/8,9 リーズ(イギリス)
- 6/28,29 モントリオール(カナダ)
- 7/6,7 ハンブルク(ドイツ)
- 7/20,21 エドモントン(カナダ)
- 8/29,9/1 ローザンヌ(スイス)
ITUトライアスロンワールドカップシリーズ
ワールドシリーズと紛らわしい名称ですが、ワールドカップはWTSの次に権威のある国際大会です。
ワールドカップは現在、スタンダード(OD)とスプリントディスタンスが混在する形で行われています。
もともと1991年に11のスタンダードレースから始まったワールドカップですが、大きな変化があったのは2009年の事でした。
2008年まではほぼ毎年コンスタントに10以上のスタンダードが行われていましたが、前述の世界選手権のシリーズ制にともない、2009年のワールドカップはたったの5レースになってしまいました。
その後スタンダードは多少の増減を繰り返しながら2019年も5レースですが、一方で2012年から加わったスプリントレースは年々増えて2019年は12レースとなっています。
ワールドカップの戦績は、ワールドランキング(ワールドシリーズランキングとは別)のポイントとして各選手に加算されますが、この時スプリントレースのポイントはスタンダードの80%として計算されます。
2019年のワールドカップのスタンダードレース開催都市は以下の通りです。
- 6/15,16 ヌルサルタン/カザフスタン
- 8/24,25 カルロヴィ・ヴァリ/チェコ
- 9/21,22 威海/中国
- 10/26,27 宮崎/日本
- 11/9,10 サント・ドミンゴ/ドミニカ共和国
ここでの日本の都市、宮崎が舞台のひとつになっていますね。
またこのカテゴリーでは、ワールドシリーズに比べて日本人選手の活躍がより多く見られます。
最近では2019年6月のヌルサルタン大会で上田藍選手が優勝していますし、特に女子では現在第一線で活躍している高橋侑子選手や、佐藤優香選手などが過去にワールドカップのメダルを取っています。
最近の男子では小田倉真選手やニナーケンジ選手などが上位をうかがおうというところですが、過去には、2007年のイスラエル・エイラット大会で、田山寛豪選手が日本人初の優勝を飾っています。
ASTCトライアスロンアジアカップ/選手権
ワールドトライアスロンシリーズ、ワールドカップといった世界大会の次に、アメリカやヨーロッパ、アジアなど各大陸ごとのシリーズ戦や選手権があります。
アジアではATSC(アジアトライアスロン同盟)が主催する、アジアカップというシリーズと、年1回行われるアジア選手権があります。
アジアカップはワールドカップ同様、スタンダードとスプリントが混在する形で行われています。
開催地は日本を中心とした東アジアが最も多く、次いで東南アジア、中央アジアなどでも行われています。
戦績はというと、ほぼ日本の独壇場と言って過言ではないと思います。
選手権の国別優勝回数では、男女ともに日本が圧倒的に多く、9割近くを日本が優勝しています。
初開催の1992年から、個人の優勝回数を数えてみると、男女の最多優勝者は次のようになっていました。
男子:細田雄一選手・・・6回
女子:上田藍選手・・・6回
どちらももうレジェンドと言っていいでしょう。
2019年だけでASTCのアジアカップ・アジア選手権は18大会ほど(スタンダードとスプリントあわせて)行われていますが、日本での開催は以下の通りです。
- 6/23 蒲郡市(愛知県)
- 7/6,7 高松市(香川県)※スプリント
- 9/15 村上市(新潟県)
- 9/22 大阪市(大阪府)※スプリント
パラトライアスロン、ミックスリレーなど
ここまではエリート男子、女子のスタンダードレースについてまとめてきましたが、パラトライアスロンやミックスリレーでも、同じように世界大会シリーズや、大陸別大会シリーズがあります。
世界大会では、パラはワールドシリーズとワールドカップに、ミックスリレーはワールドシリーズと併催されています。
日本人選手の成績はというと、スタンダード同様、アジアでは強さを見せつつも、世界の壁はまだまだ高いと言ったところのようです。
スタンダードとは違った魅力のあるカテゴリーだけに、今後これらも観戦の人気が上がってきそうです。
特にミックスリレーは、オリンピックでは東京2020から正式採用されたカテゴリーで、今とても注目を浴びています。
男女2名ずつの計4名でチームを作り、それぞれがスイム300m、バイク8km、ラン2kmのスーパースプリントをリレーでつなぎ、合計タイムで競います。
他のトライアスロンのカテゴリーでは観られない、超高速レースや、男女が入れ替わり目まぐるしく動くレース展開が特徴です。
トライアスロンの国際大会まとめ
いかがでしたか?
トライアスロン(オリンピックディスタンス)の国際大会は、最高峰のオリンピックから順に、以下のような構造になっています。
- オリンピック
- ワールドトライアスロンシリーズ(+グランドファイナル)
- ワールドカップシリーズ
- アジアカップシリーズ、アジア選手権
下に行くほど日本人選手の華々しい活躍が見られますが、オリンピックやワールドシリーズではまだまだ世界の壁は高いと言わざるをえません。
しかし、2016年の上田選手のWTSランキング3位を始め、世界との距離が縮まりつつあることも感じられます。
我々トライアスロンファンも、オリンピックだけでなく、シリーズ戦などで頑張っている日本人選手に注目し、応援していきたいですね。