着地方法に注目したランニングフォームの一つに「ミッドフット走法」があります。
別名、フラット着地走法などとも呼ばれ、文字通り足裏を地面と平行にして着地する走り方です。
ミッドフット走法には、
- 着地時の脚へのダメージ、特に膝や足首への負担が小さい
- 体が上下しないので上体が安定し、エネルギーロスが少ない
などのメリットがあります。
私自身、ランニングによる膝のトラブルを抱えており、もともとヒールストライク走法(かかと着地)で走っていたのを、ミッドフット走法に変更した経緯があります。
その時の経験も踏まえて、この記事ではミッドフット走法で走るコツや、狙い通りの走り方ができているかのチェックポイントなどを紹介していきます。
また、ランニングの着地方法によるメリットやデメリットについては別記事でまとめていますので、こちらも併せてご覧いただければと思います。
ミッドフット走法とホンダの二足歩行ロボットの関係!?
いきなり少し話が逸れますが、ミッドフット走法で私が必ず連想してしまうのが、ホンダが開発した二足歩行ロボット「アシモ」の足とその歩き方です。
現在ではもうアシモの開発は終了しているようですが、白いボディの人型ロボットが、中腰に近いような姿勢で二足歩行している映像は、今も多くの人の記憶に残っていることでしょう。
アシモはロボットらしく超偏平足で、歩くときに足裏を地面に平行な状態で接地させます。
この接地の仕方が、ランニングのフラット着地とアシモの歩き方でよく似ているのです。
私がミッドフット走法を始めたころは、よく頭の中でアシモが歩いていたものです。
ところがミッドフット走法とアシモの歩行方法には、決定的な違いもあります。
アシモの歩き方を覚えている方は分かると思いますが、膝を大きく曲げて、腰を落として歩行するのが特徴的です。
このような歩き方になっているのには技術的な背景があるのでしょうが、この膝の使い方が、ミッドフット走法とはまるで違っています。
ミッドフット走法では膝をあまり曲げません。
接地位置も体の前方ではなく、ほぼ体の重心位置の真下付近です。
ミッドフット走法では、膝が比較的伸びた状態で重心位置の下で着地することによって、着地の衝撃を体幹で受けとめ、脚にかかる負担を軽減しています。
従って、アシモのように膝を大きく曲げて走ってしまうと、ミッドフット走法をすることの恩恵が受けられなくなってしまうのです。
フラット着地に変えたことで膝の痛みが軽減した話
少し個人的な経験をお話しさせていただきます。
私は20代後半で膝を痛めて以来、しばらく趣味のトライアスロンができないでいました。
走ると膝の外側が痛くなる、「腸脛靱帯炎(別名:ランナー膝)」というやつです。
これに見舞われてからは、トライアスロンはおろか他のスポーツも基本的にはやらず、ほんの時々思い立ってランニングをする程度でした。
それでも走った次の日になると膝が痛くなり、継続的に走るということができない状態に陥っていました。
ある時、このままではいかんと思い、本当にどうにもならないものだろうか考え、ネットで調べまくった結果、これはフォームの改善で何とかなるかもしれない、という結論に至りました。
そのフォーム改造のメインが、ミッドフット走法への変更だったのです。
最初はミッドフットとフォアフットとの違いすら感覚的につかめず、ピンとこないまま走っていました。
それでいて翌日の筋肉痛(ふくらはぎとか、アキレス腱の痛みとか)だけは残る、という状態でした。
それでも、これを成功させないともうランニングやトライアスロンはできない、という思いで続けたところ、1か月くらいで何となくコツを掴み、半年後くらいにはすっかりミッドフット走法が板についていました。
その結果、膝の痛みは劇的に改善しました。
無理さえしなければ膝が痛むことはほとんどなく、またランニングやトライアスロンの大会に出場したりできるようになりました。
ミッドフット走法を身に付けるための練習のコツは?
ミッドフット走法の要点は以下のようになります。
- 足裏全体で接地
- 着地位置は体の重心位置の真下
- 膝をあまり曲げない
- 腰の位置は高く一定に
- 接地時間を短く(ピッチ走法)
従って、これらのことを一つ一つ実践していけば、ミッドフット走法はできるわけです。
ですがこれが言うほど簡単にはいかないものです。
そこでもう少し具体的に、経験から得た3つのコツに絞ってお話しします。
足を蹴りだすタイミングを少し遅らせる
ミッドフット走法では着地位置が重心の真下付近になります。
ただ「重心の真下付近に着地しよう」と思って走ってもなかなかうまくはいきません。
走るわけですから、当然足は前に運びます。
上体も前に進んでいるので、前に出した足が設置するころに、重心位置がだいたい足の真上に来ているというのが実際の構図です。
私の場合これを実現するために、蹴りだす直前の足を従来よりも少し長く後ろに残しておく感覚で走ることで上手くいきました。
足をほんの僅かな時間後ろに残しておくことで、その間に上体が前方に進むので、蹴りだす足の位置が、重心位置に対して相対的に遅れ気味になります。
そうして重心の真下で着地することができれば、自然と足裏はフラットに接地することになります。
重心位置で着地していながらかかと着地するのは、意識的につま先を上げるようにでもしない限りは起こりにくいはずです。
足を後方に残しておくことで、一時的に歩幅が長くなってストライド気味になったように感じるかもしれません。
ですが、重心位置で着地する感覚さえ身につけば、そこから徐々に歩幅を短くしていき、ピッチ走法に近づけていけば良いのです。
着地方法とピッチには密接な関係があります。
ストライド走法とピッチ走法については、別記事でまとめていますので、よろしければこちらもどうぞ。
腰の位置を意識する
かかと着地の場合、着地の瞬間~脚が重心位置を通る時~足を蹴りだす時と、腰の位置が上下動を繰り返します。
それに対しフラット着地の場合は、膝をあまり曲げず、かつ歩幅を小さくすることで、腰の位置を高く一定に保ちます。
横から見たときに腰の位置が変わらずスーッと水平移動していくところをイメージしながら走ると良いでしょう。
実際にランニング中にガラスなどに反射した自分のフォームを見ることができるのであれば、腰の位置に注目してください。
また腰の位置を高くするには、下腹部の筋肉を使うこと、骨盤をまっすぐにして走ることを意識すると効果的です。
腹筋で足を動かす
最後に、走るために必要な推進力についてです。
ヒールストライク走法(かかと着地)では、足の甲を使って、足を後ろに蹴りだすようにして推進力の一部としていました。
それに対してミッドフット走法では、蹴りだすというよりも足裏全体で地面を押すようにして走ります。
そのため、一歩で得られる推進力は小さくなり、かつハムストリングやふくらはぎにかかる負担は増します。
歩幅を狭く、歩数を増やすピッチ走法が基本となるので、推進力の問題は数多く足を前に運ぶことで補います。
この時、足の筋肉だけで走るのではなく、腹筋を使って足の付け根から動かすように意識します。
腹筋をうまく使えると、ハムストリングやふくらはぎの負担も軽減され、長く楽に走れるようになります。
足音とふくらはぎの痛み!? ミッドフット走法のチェックポイント
では、これまでに述べた要点を押さえた走りができているかどうか、どのようにしたらチェックできるでしょうか?
以下、3つのチェックポイントを挙げたいと思います。
着地時の足音
フラット着地で足裏全体で着地すると、かかと着地に比べて着地時に生じる足音が大きくなります。
ジムのトレッドミルなどで走っていると特に顕著で、「ダンッ、ダンッ、ダンッ」とかなり響くので、周りのランナーから注目を浴びることもあります。
筋肉痛
思惑通りに走れていれば、最初のうちハムストリングやふくらはぎが疲れやすくなるはずです。
従ってこれらの部位に筋肉痛がある場合、それはむしろうまくフォームの移行ができているという一つの目安にもなります。
シューズのソールのすり減り方
かかと着地のランナーは、シューズのかかと特にかかとの外側がすり減りやすいという特徴があります。
フォームを変える際、合わせてシューズも変えておくと分かりやすいですね。
フォーム変更後のシューズのかかとがすり減っていかなければOKです。
ミッドフット走法のコツとチェック方法 まとめ
いかがでしたか?
ミッドフット走法を習得したい、というランナーの皆さんのために、練習のコツとチェックポイントを紹介しました。
要点だけ改めて書き出してみます。
練習のコツ
足を蹴りだすタイミングを少し遅らせる
腰の位置を意識する
腹筋で足を動かす
チェックポイント
着地時の足音
筋肉痛の有無
シューソールのすり減り方
個人的な経験からは、ランニングの負荷からくる膝の痛みへの対抗策として、このミッドフット走法が非常に役立ちました。
しかしランニングフォームは、個々の骨格や筋肉、ランニングの技術やスピードによって何が最適かが変わってきます。
フォームの改造は慎重に行うよう心掛けていただきたいと思います。