さて、屋内プールにおけるウェットスーツ着用の可否についてです。
トライアスロンの大会ではウェットスーツを着用することが多いので、大会に向けての調整でウェットスーツを着て泳いでおきたい、という人は多いと思います。
海水浴のできる海の近くにお住いの方や、遊泳のできる池や湖が近くにあるという方は、より実践に近い練習ができると思います。
しかしそんなに恵まれた環境にいるトライアスリートはそうはいないでしょう。
となるとプールでもいいのでウェットスーツを着てレースの模擬をしておきたいところですが、そこで疑問になるのが、「プールでのウェットスーツ禁止問題」です。
この記事では、実際に5つのプール施設に確認した結果を踏まえて、この問題について情報を整理したいと思います。
禁止事項の多い日本のプール施設
私は欧州在住時にもトライアスロンの練習をしていましたが、あちらのプールでは、禁止事項というものが日本ほどありませんでした。
ガラスなどの割れものは危険なので持ち込みが禁止されていたと思いますが、泳ぎの練習に使う道具や、浮き輪などの遊具については、これはダメあれはダメというのがほとんどなかったと記憶しています。
日本に戻って初めて行ったプールで泳いでいた時、監視員に止められて腕時計の着用を注意されたのはちょっとしたカルチャーショックでした。
時計もダメ、プラスチックのパドルもダメ、飲み物も持ちこんじゃダメ(当時)と、たかがプールでずいぶん厳しいなと感じたものです。
また日本のプールはちゃんと泳ぐ人のためにコース分けされていて、早い人はこっち、遅い人はこっちとか、追い越す場合は左からとかルールが決められていたりします。
これは良くもあり少々面倒なところでもありますが、みんなが一様にルールを守ってさえいれば、快適にトレーニングができる環境ではあります。
一方でヨーロッパのプールの多くはコース分けなど皆無で、またルールも無くモラルも高いとは言えないので、混雑時はちょっとしたカオスになります。
少し話が逸れましたが、それでは本題に入ります。
ウェットスーツ着用可否について、とりあえず片っ端から電話して確認してみた結果
プールでのウェットスーツ着用可否についてはネット上にもいくつか情報がありましたが、いまいちはっきりしないのでとりあえず手あたり次第、電話で確認することにしました。
運営会社のウェブサイトには「利用上の注意」などという形で禁止事項が書かれていることが多いのですが、ウェットスーツについてはまず触れられていません。
基本的には想定外という事ですね。
今回5つのプール施設に確認をしましたが、「ウェットスーツの着用はOKか?」と訊くと、だいたい「え?ウェットスーツって何?」というところからスタートでした。
そんなこんなで確認した5件について、以下、結果です。
1軒目-いつも通っている公営プールの場合
1軒目は練習に行ったついでに受付で確認。
やはり「トライアスロン用のウェットスーツ」と言っても最初は首を傾げていたが、説明したところ問題なしとの回答。
時計やパドルの使用は禁止ながら、着衣については特に規制はないとのこと。
若干拍子抜けはしたが、まずは一安心。
2軒目-別の市の公営プールの場合
まず電話口の女性は、分からないので確認しておくから後ででまた電話ください、とのこと。
30分後にかけなおしたところ今度は男性の職員。一通り同じ説明をしたところ、回答はNG。
なんでも、「ラッシュガードはOKだけどウェットスーツはNG」という事だった。
ラッシュガードというのはよく女性がUV対策で身に付ける衣類で、マリンスポーツでも冷えの対策とかで使用されるもの。
理由を聞いていくと、「生地に厚みのあるもの」はダメとのこと。
意味が分からないのでもう少し聞くと、基本的にウェットスーツ的なものはダメで、ウェットスーツとラッシュガードの区別として、「厚み」を持ち出しただけという事だった。
つまり生地に厚みがあることがNGの理由ではなく、特に理由はないけどウェットスーツはとにかくダメという事になる。
3軒目-大規模な屋内レジャープールの一角にある25mプールの場合
ここは基本レジャープールなので大丈夫かと思ったら、以外にも回答はNG。
理由は「外で使ったことのあるものはダメ」ということだった。
外で使っている水着はOKなはずだが、どうしてダメなのかもう少し聞いてみると、「土とか雑菌とか…」とのこと。
念のため「ちゃんと洗ってあってもだめか?」という質問をしたところ、それでもダメだそう。
4軒目-さらに別の市の公営プールの場合
さらに別の公営プールでも、受付の方では判断がつかず責任者らしき人に代わって回答をいただいた。
結果、ウェットスーツ自体は禁止していないので基本的にはOK。
ただし外で使ったものをそのまま使うのはNGで、しっかり洗浄したうえでの使用ならOKとのこと。
非常に明確な回答で、納得性も高い。
5軒目-チェーン展開している大手スポーツクラブのプール
季節によって利用させていただいているスポーツクラブにも確認。
まず電話に出たのはアルバイトの方だったらしく「大丈夫なはずだが、念のため社員に聞かないと分からない」という事で、のちほど電話をいただくことになった。
しばらくして電話をいただき、「基本的には大丈夫だけど、念のため実物を見てみないと何とも…」という事だったので、トライアスロンのウェットスーツについて説明していると、電話口でググったらしく、「これならOK」という回答となった。
ウェットスーツ着用禁止の場合の理由
以上のように、結果は5軒中3軒が最終的に「着用OK」となりました。
この結果自体は、トライアスリート側としては非常に好意的に受け止められる結果ではないかと思います。
ただNGの理由については今一つ判然としないものが多かったように感じます。
「外で使ったものかどうか」に注目されることが多いようですが、洗えばOKというところと、洗ってもNGというところに分かれました。
いずれにしても、プールでウェットスーツを使用するという事があまり想定されておらず、ほとんどの施設でおそらく議論すらされていないのではないか、という印象を受けました。
それ故、
「とりあえずぶつかっても怪我をしないような柔らかいものならOK」
という考え方と、
「いやいや、とにかくプールで泳ぐのに不要なものは禁止」
という2通りの考え方にも分かれるようです。
プールの塩素でウェットスーツが溶ける?
一方で、プールで使用することによるウェットスーツの劣化を懸念する意見もあります。
プールは消毒のため塩素が使用されていますが、この塩素によってウェットスーツの生地が溶けることがあるというのです。
真偽について専門的な知識はありませんが、そうした情報が流れているからには、そのような化学反応は多かれ少なかれあるのかもしれません。
ただ、実際に多くの方がプールで練習に使用していて、「プールで使用した後は水で洗ってから乾かしましょう」と言われているくらいなので、ちょっとやそっとでは実害には至らないのだろうと推察します。
少なくとも、普段の練習は普通に水着でやって、レースの前にウェットスーツの「慣らし」としてプールで使うくらいであれば、問題にはならないでしょう。
ウェットスーツは、プールでも海水でも、使った後はシャワーなどで洗い流して、しっかり乾燥させてから保管するようにしましょう。
ダメだとあきらめないで近くのプールに確認してみましょう
以上、ウェットスーツのプールでの使用についてでした。
今回確認した結果では、5軒中3軒から、ウェットスーツを使用しても良いという回答を得ることができました。
施設によってスタンスは様々なようなので、まずはお近くのプールで確認してみていただければと思います。
プールでは割れて床に散らばると危ないのでガラス製品などの持ち込みは厳禁ですが、水泳の練習に使用する用具で他にもよく使用が禁止されているものがあります。
禁止されている場合が多いのは、
- 時計
- パドル(柔らかいグローブなどはOK)
- フィン
などで、基本的に硬くて他の人にあたると迷惑になるものはNGとされています。
以前は飲食物全般NGというところが多かったですが、最近は飲み物だけはOKというところが増えてきたように思います。
熱中症などの危険性に対する認識が上がった表れ、と見ることができそうですね。