フォームローラーの効果と使い方について解説します。
近年、美容や健康需要からフォームローラーを使ったボディケアが流行していますが、体を酷使するアスリートこそ、フォームローラーの利用価値が高いと言えます。
ランニング、水泳、サイクリングなど、トレーニングの前後にフォームローラーを使ってケアすることで、誰でも簡単に怪我の防止や疲労回復などの効果が得られるのでおすすめです。
フォームローラーとは?
名前の通り、フォーム(発泡プラスチック→foam)を素材としたローラー(円柱や円筒)状のものです。
いくつか派生形があり、ストレッチポールなどと呼ばれる1メートルくらいの長いものや、円柱を半分に割ったかまぼこ型のものなどもあります。
ここではトリガーポイントなどが有名な、写真のような短めのタイプのフォームローラーについて扱います。
ストレッチポールについては別記事で紹介していますので良かったらどうぞ。
フォームローラーのメイン素材はEVAや硬質PVC、ウレタンやポリエチレン系などの発泡樹脂で、素材によって体に当てたときの硬さが異なります。
発泡樹脂だけでできているものもあれば、硬質プラスチックを芯にした円筒状のものもあります。
使用感や使い勝手に違いが出るので、目的や好みに合わせて選びます。
プロのアスリートであればトレーナーがマッサージなどのボディケアをしてくれたりしますが、一般人はそうもいきません。
フォームローラーは、誰でも手軽に自分の体をマッサージできるセルフケアアイテムです。
「筋膜はがし」などという言葉の流行と共に一気に定着したこのフォームローラー。
今ではどこのスポーツジムにも置いてあり、スポーツショップだけでなくホームセンターにもヨガマットなどと同じコーナーで扱われています。
パッケージの写真などで外人さんがやっているように筋肉にあててゴリゴリやれば良さそうですが、果たして正しい使い方はどのようにすれば良いのでしょう。
使い方に進む前に、まずはフォームローラーを使ったエクササイズの効果について見ておきましょう。
フォームローラーを使った筋膜リリースの効果
いきなり「筋膜リリース」というワードを出してしまいましたが、いわゆる「筋膜はがし」や「筋膜ほぐし」などというのと同じです。
筋膜というと、筋肉と皮膚の間にある「膜」というイメージを持っている人が多いようですが、実際には膜状のものではありません。
「筋膜」は、骨、筋肉、臓器、血管や神経などあらゆる体内組織を包括的に結び付けている組織です。
筋肉や骨格を使って体の姿勢を維持するのにも、各組織が連動して手足を動かすなどの動作をするのにも、筋膜の働きが欠かせません。
ところが、長時間の運動により疲労が蓄積されたり、激しい負荷によって損傷を受けたりすると、筋膜は正常に機能できなくなってしまいます。
正常に機能しなくなると、筋力や柔軟性が低下したり、怪我の原因となったりします。
筋膜の機能不全は直接の患部だけにとどまらず、体の他の部位に痛みとして表れたり、競技のパフォーマンス低下に繋がったりします。
- 「筋膜」とは…
- 全身の骨や筋肉や内臓をつなぎ合わせ、姿勢を維持したり力を伝達したりする働きを持つ組織
- 疲労などで筋膜が機能不全になると…
- 柔軟性や筋力が低下し、パフォーマンス低下や痛みの原因になる
そこでフォームローラーを使った筋膜リリースの出番というわけです。
フォームローラーを使うことでどんな効果が得られるのか、運動前と運動後に分けてみてみましょう。
効果1.運動前の筋膜の癒着を解消する
運動前の筋膜は、機能不全ではないにしても、長時間動かしていなかったり姿勢が悪かったりすると萎縮や癒着を起こしています。
このままの状態でいきなり運動を始めてしまうと本来の力を出せないばかりか、怪我の原因にもなります。
なので従来から準備運動なりストレッチなりをやっていたと思いますが、ここにフォームローラーも加えることでより効果が高くなります。
トレーニングや試合などの前にフォームローラーを使って筋膜リリースをしておくと、筋膜の委縮・癒着が解消され、可動域が広がって怪我のリスクが軽減し、筋肉も本来の出力を出せるようになります。
効果2.運動後の硬くなった筋膜・筋肉をほぐす
運動後の筋膜・筋肉は硬くこわばった状態になっています。
そのまま放っておくと血液循環も悪くなり、疲労の回復は遅く、徐々に痛みとなって表れることもあります。
クールダウンのストレッチと合わせて、フォームローラーを使用することで硬くなった筋膜・筋肉をほぐし、機能回復を促進することができます。
血液循環が改善することで疲労回復を早める効果も期待できます。
フォームローラーおすすめの使い方
では具体的にフォームローラーの使い方を紹介します。
基本的な使い方としてはフォームローラーを床に置き、ほぐしたい体の部位をローラーに乗せでゴロゴロと転がすだけなので簡単です。
ただ効果を高めるポイントがいくつかあるので、それらを最初にまとめておきます。
- フォームローラーの効果を高める使い方
- 適度に体重をかける
- 大きく動かさず、狭い範囲で動かす
- 痛くなく、気持ちいいと感じる範囲で行う
フォームローラーの使い方として、「しっかり体重をかけて」という文言をよく見かけますが、圧迫のしすぎは逆に筋肉を傷めることにもなりかねないので注意しましょう。
とは言え最初は多かれ少なかれ痛みを感じることはあるので、最初は柔らかめのフォームローラーを使うなど、徐々に自分に合った体重のかけ方を会得していってください。
大きなストロークで転がした(例えば背中に当てて腰から肩まで転がすなど)方が効率的だし気持ちよく感じるかもしれませんが、狭い範囲でゆっくり行った方がより高いほぐし効果が得られます。
では具体的な使い方を、対象部位で見ていきましょう。
使い方1.ふくらはぎ、長趾伸筋
床に置いたフォームローラーに片足のふくらはぎを乗せ、腰を浮かせた状態でゆっくり前後に動かします。
一気にふくらはぎ全体をほぐすのではなく、ふくらはぎを3分割くらいして狭い範囲でほぐしていきましょう。
脚の外側にある長趾伸筋も同じように行います。
いずれも痛みを伴いやすいので、まずは膝から下の重みをかける程度の感覚でやってみて下さい。
使い方2.ハムストリング、腸脛靭帯
太腿の裏側、ハムストリングをランニング前に十分刺激しておくと、ランニング中にハムストリングを効果的に使って走ることができます。
ハムストリングのような大きな出力がありながらなかなか使いこなせていない筋肉への刺激は、パフォーマンスアップに大きな効果があります。
使い方はふくらはぎと同じです。
ハムストリングも、3分割くらいにして狭い範囲でゆっくりフォームローラーをかけていきます。
ふくらはぎに比べ、十分に体重をかけて行いましょう。
外側の腸脛靭帯は軽めに。痛みを伴わない程度にほぐしてください。
使い方3.大臀筋
片側ずつ臀部をフォームローラーに乗せて、十分に体重をかけます。
範囲が狭いので、5センチくらいの範囲でゆっくり前後に動かします。
個人的には大臀筋のほぐしがやっていて一番心地よく感じるところでもあります。
使い方4.胸腰筋膜、広背筋
腰痛や肩こりの予防・軽減のためにも、運動前後だけに限らずフォームローラーを使ってほぐしておきたい部位です。
腰、背中、肩甲骨下、肩甲骨という感じで、4つか5つくらいに分割して順に行ってください。
特に気になるところは、最初フォームローラーは静止した状態で適度に体重をかけ、その体勢をしばらく維持(20~30秒など適宜)します。
前後に動かす前にこのステップを追加することで、ストレッチ効果が高まりますし、普通に気持ちいいのでおすすめです。
個人的には腰と肩甲骨下で静止するステップを入れるようにしています。
おすすめのフォームローラー
フォームローラーはたくさんの製品が世に出ていますが、その中から性質が異なる3つのおすすめフォームローラーを紹介します。
使用目的や好みに合わせて選んでください。
トリガーポイント(TRIGGERPOINT) グリッドフォームローラー
基本的にはトリガーポイントを選んでおけば間違いないと思います。
アメリカに行くといつもスポーツショップをチェックしますが、マッサージコーナーにはトリガーポイントがずらりと並んでいます(ウォルマートなどスーパーだともっと安価なものが並んでいます)。
フォームローラーを選ぶ時に大事なのは、
- 直径
- 表面の素材(硬さ)と形状
- 耐久性
です。
トリガーポイントの直径は5.5inch(14cm)ですが、直径は14~15cmくらいあった方が安定感があり、体重もかけやすいです。
安価なものだと12cm前後のものが多いです。
この2,3cmの違いが使用感に大きく影響するので、大きめの直径のものを選ぶことをおすすめします。
トリガーポイントは表面がEVA素材で適度な硬さがあり、耐久性にも優れています。
中芯部には硬質なABS樹脂が使われており、安定性と耐久性をさらに向上させています。
少し値段は張りますが、あれこれ悩んで失敗するよりは、大本命を選んでおく方が無難かと思います。
La-vie(ラヴィ) ストレッチローラー
一方で、安価で小ぶりなフォームローラーにも利点はあります。
ラヴィのフォームローラーは日本のスポーツショップでもよく見かけます。
これの利点は直径12cm、長さ30cmのコンパクトさです。
トリガーポイントのサイズだとスーツケースに入れるとかなりの存在感ですが、直径と長さが数cmずつ小さくなるだけでだいぶ控えめになります。
私は普段、次に紹介する電動ローラーを使っていますが、海外出張などのために直径12cmのローラーを購入しました。
先に述べた通りやや体重をかけにくいので、硬めの素材のものがおすすめです。
電動フォームローラー
電動でブルブル震えるフォームローラーです。
体重をかけてゴロゴロ転がすフォームローラー本来の使い方に振動をプラスすることで、筋肉・筋膜のより深部にまで効果を伝えることができます。
振動数は4段階あり、ボタン1つで切り替えるようになっています。
振動させずにそのまま普通のフォームローラーとしても使えるので、体の部位によって、あるいはコンディションによってさまざまな使いわけができるのがとても便利です。
フォームローラーでランニング前後の筋肉ケアをしっかりと
フォームローラーの効果と使い方、おすすめの3タイプを紹介しました。
スポーツ前後のボディケアの方法やグッズはたくさんありますが、フォームローラーの使用は効果も実感しやすく、費用も大して掛からないのでコストパフォーマンスがかなり高いと思います。
本文でも書いた通りフォームローラーを使ったボディケアは「手軽」で「簡単」ではありますが、できればある程度の時間はかけてゆっくりとケアできるとベストです。
特に長時間のトレーニングや負荷の高い運動をする時には、前後のフォームローラーの時間まで計算に入れて余裕のある練習計画を立てて臨みたいですね。