昨今ますます耳にすることが増えてきた、「ランニングの着地問題」についてです。
TVドラマの影響なども手伝って、マラソンや箱根ランナーの走法がどうだこうだという話題には事欠きませんね。
今回は、タイトルに取り上げた「かかと着地」と「フラット着地」に加えて、アフリカのトップ選手などにみられる「つま先着地」も含めて、
- 着地の仕方によって何が変わってくるのか
- それぞれの着地方法の特徴やメリット・デメリット
といったポイントを紹介していきます。
そもそもランニングで着地の仕方を気にする理由は?
まず、着地の仕方によって何が変わってくるのでしょうか?
それは大きく分けて、
- 体への負担
- スピード(効率)
の2つです。
着地方法の違いというのは、「どこで」着地するかだけではなく、「どこに」着地するかの違いでもあります。
例えば、かかと着地のほうがフラット着地よりも、体に対して前方で着地します。
すると、体の重心位置と着地位置との関係から、脚にどのような負荷がかかるかが変わってくるのです。
慣れた走り方を変えるというのは、とても根気のいる大変な作業ですし、リスクも伴います。
良かれと思って変えた走り方が自分の体に合っていなかったら、どこかを痛めてしまう可能性もあります。
それだけに、走り方を変えるということには大きなモチベーションが必要になります。
市民アスリートにとって、それくらいの大きなモチベーションの源があるとしたら、やはり一番は怪我ではないでしょうか?
ランニングでどこかを痛めてしまった、走りたくても走れない、ああ自分にはもうランニングはできないのかもしれない、そんな思いを抱えたランナーであれば、ここはダメもとで走り方を変えてみよう、という風にも思えるでしょう。
また、着地方法は走りの効率も変えるので、タイムにも着実に影響します。
よく、マラソンのトップ選手が、走法を変えたら記録が伸びた、といった話もテレビで見かけます。
とはいえ、着地の仕方というのはランニングフォームの一部であって、ランナーの骨格や筋肉などと密接に関係するので、どうしたら速くなるとか一概に言えるものではありません。
メリットとデメリットを理解したうえで、自分に合ったものは何かというのを見極めなければなりません。
ではここから先は、ランニングにおける3通りの着地方法について、それぞれの特徴やメリット、デメリットを見ていきたいと思います。
かかと着地(ヒールストライク走法)
別名「ヒールストライク走法」とも呼びます。
日本人のランナーはかかと着地が多いといいます。
自然とかかと着地で走るように体のつくりができているのでしょうね。
かかと着地の特徴
かかと着地の特徴は、
- 体の重心より前方でかかとから着地
- 着地後はかかとから母指球へと体重を移動
- 足の接地時間が長い
- 靴のソールのかかと部分(特に外側)が減りやすい
というものです。
かかと着地のメリット
メリットとしては、足の裏を使って自然な体重移動を繰り返すので、比較的楽に推進力を得やすい走り方であるということです。
そのため、蹴りだす動作に使われるふくらはぎやアキレス腱への負担は小さく抑えられます。
かかと着地のデメリット
一方デメリットは、着地が重心より前方であることから、着地時の膝への負担が大きいことが挙げられます。
また体が上下に振れやすいため、特に高速のランナーにはエネルギーのロスが大きいとも言われます。
フラット着地(ミッドフット走法)
「ミッドフット走法」とも呼びます。
文字通り足裏がフラットな状態、つまり地面と平行な状態で着地する走り方です。
TVドラマで話題になったこともあり、近年すっかりメジャーになりました。
フラット着地の特徴
フラット着地の特徴は、
- 足裏が地面と平行な状態で、足裏全体で着地
- 着地地点はかかと着地に比べると後方で、体の重心のほとんど真下で着地
- 足裏の設置時間は短く、そのため自然とピッチ走法寄りになる
となります。
フラット着地をしながら大股で走ることは難しく、ストライド走法よりもピッチ走法のほうがフラット着地には向いています。
ストライド走法とピッチ走法については別記事でも紹介していますので参考にしてください。
フラット着地のメリット
メリットは、まず着地時の脚へのダメージ、特に膝や足首への負担軽減です。
足裏全体で衝撃を受けることと、膝が比較的伸びた状態で着地することで、着地時のインパクトが膝などの関節に集中するのを避けることができます。
また、膝をあまり曲げないので、腰の位置を高く一定に保つことができます。
これにより腰から上の状態が安定し、エネルギーロスを抑える効果もあります。
膝を大きく曲げないのが、かかと着地との大きな違いの一つです。
膝を大きく曲げて走ってしまうと、ミッドフット走法のメリットは得られません。
フラット着地のデメリット
デメリットとしては、かかと着地に比べて脚の筋力を酷使するという点です。
自然な体重移動で推進力を得るかかと着地に比べて、フラット着地では足裏全体で地面を押し出すようにして推進力を得るため、そのための筋力が求められます。
私自身、ランニングで膝のトラブルを抱えていたため、かかと着地からフラット着地へ変更した経緯があります。
特に足の裏側、ハムストリングやふくらはぎを酷使することになるので、フラット着地に変えた直後はよく走った後に筋肉痛になっていました。
そのあたりは慣れというか、トレーニング次第ですね。
個人的にはフラット着地に変更したことで、膝のトラブルがかなり改善し、今でも走っていられるのはそのおかげだと言っても過言ではありません。
フラット着地に変更する場合のコツやチェックポイントなどは別記事にまとめていますので、よろしければご覧ください。
つま先着地(フォアフット走法)
「フォアフット走法」とも呼びます。
アフリカのマラソン選手の多くがつま先着地だということで認知度が上がりましたが、日本人、特に市民ランナーレベルでは、脚への負担が大きすぎて非現実的だという考え方が一般的なようです。
つま先着地の特徴
つま先着地の特徴は、
- 体の重心直下付近でつま先から着地
- 着地後は一度かかとを接地し、母指球で蹴りだす
となります。
つま先着地のメリット
メリットとしてはスピード効率が良く、衝撃吸収性が高いことです。
つま先から着地するってことは、つまり忍び足と同じなわけですね。
忍び足というのは音を立てないで歩くための動作なので、つまり着地のインパクトが一番小さい着地方法ということです。
つま先着地のデメリット
デメリットはちょっとやってみればすぐにわかりますが、ふくらはぎやアキレス腱への負担が非常に大きいことです。
ちゃんと鍛えずに付け焼き刃のつま先着地で走った場合、アキレス腱を痛めてしまうリスクがあるのでご注意ください。
結局かかと着地とフラット着地、どっちがいいの?
前述したように、骨格や筋力など個人差や人種間差も大きく関わってくるので、どちらがいいのかというのは一概には言えません。
またそこには、技量や能力の違いだけでなく、怪我をしやすいなどの身体的トラブルも介在してくるので、自分がランニングにおいて「何を一番優先させたいのか?」を問う必要もあるかもしれません。
トップ選手がフォームを変えたら記録が伸びたとか、とあるシューズのおかげで箱根で区間新が出たとか、巷にはいろいろな情報があふれていますが、一つ一つに惑わされているときりがありません。
例えば今の走り方で何の問題もない、怪我もないしタイムも少しずつでも伸びてる、というのであればそのフォームが自分にとってベストなのかもしれません。
前述したように、そもそもフォームの変更というのは根気と覚悟が必要なものです。
今抱えている問題があればそれとじっくり向き合って、何が自分に必要なのかをゆっくり考えてみてはいかがでしょうか?