【狭心症とトライアスロン⑥】そして3年ぶりのトライアスロンレース出場へ?

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このコラムでは、40代半ばにして狭心症を患った経験から、狭心症治療とその後の生活やトレーニングなどについて「狭心症とトライアスロン」をテーマにシリーズで、かつ進行形の状態で綴っていく。

今回はシリーズ6回目。過度に身体を気にすることなく運動ができるようになってからしばし、2つのレースへのエントリーまでのいきさつと、1つ目のスプリントレースについて。

 

シリーズ1回目のコラムはこちら

 

さあまた走るのが楽しくなってきた

シリーズコラムと銘打っているくせに前回からすっかり間が空いてしまった。

第5回を書いたのが去年の9月下旬なので、それから9か月以上が経ってしまっている。久しぶりに読み返してみると、最後にドクターの診察を受けた後からトレーニングらしいトレーニングを再開したものの、腰痛などもあってなかなか思うようにはいかないというところで終わっている。

思い返すと前回コラムの直後、2022年10月はじめにコロナに罹患した。腰痛の後はコロナ、そしてコロナの後もなかなか体調が戻らずしばらくもどかしい時期を過ごしていたことを思い出す。体調もさることながら居住地である欧州の島国では冬の間は天候がすこぶる悪く、雨が多く風も強い。アウトドアでまとまったトレーニングを積むのはなかなか難しい。

それでも歩みを止めなければ事は前に進んでいくもので、無理のない範囲で体を動かしながら2023年を迎え、吹きすさぶ冷たい風が時おり生暖かく感じられるようになった3月くらいには、久しぶりに走ることが楽しく感じられるようになっていた。週末の小旅行にランニングシューズを持っていく習慣も戻っていたし、近場で行われるランニングイベントに2回ほど参加したのもこの3月のことだった。

 

走るのが楽しいというのは何かひとつバロメータ的なところがある。いわゆるランナーズハイというやつなのかもしれないけど、走っていてふと気持ちよくなり空を仰いでしまうような時がある。見上げた空が青ければなお良いのだが、そうでなくても、あるいはビルに囲まれた街中であっても森の中であっても、なにか良いものばかりに囲まれて走っているような気分になる。

決してスピリチュアルな話ではなくて何らかの脳内物質の分泌なのだろうが、とにかく体調や天候などそれなりには条件が揃わないとそうはならない。気持ちの良いランニングができれば成功体験的にまた翌日の腰が軽くなるし、逆に体調も気分も今一つなランニングが続くとモチベーションは下がっていく。この時期走ることが楽しくなってきたと感じられたことは、移動平均的に見てコンディションが上向きになっていたということでもあったように思う。

 

レースへのエントリーと人間ドック

3年ぶりとなるトライアスロンへのエントリーをしたのは2月と3月のことだった。出場する大会は7月のスプリントと8月のオリンピックディスタンスだ。いずれも居住地近郊のレースで、8月のODに関しては自宅から自転車で15分程度の広大な公園が会場になっている。

この時期にエントリーをしたのは他でもない。狭心症の手術や再発騒動を経て思ったより長くかかってしまったが、この頃からまた以前と同じようにトレーニングできるようになって体調に自信がついてきた為である。まだ100%を出し切るようなレースはしないとしても、イベントとして楽しめるであろうことに疑う余地はあまりなかった。

 

ただ一方で、この時期にエントリーしたのはまだレースのキャンセル料が発生するまでにはしばらく余裕があったからでもある。4月に日本へ一時帰国して心臓のCTと人間ドックを受ける予定があったので、念のため狭心症の処置をしてくれた循環器医師と現状を確認してから最終判断することにしていたのだ。

その4月が来て約一年ぶりの日本に2週間滞在したのだが、循環器の通院やら人間ドックやらで、都合5回ほど病院へ足を運ぶことになった。結果としてはCTでも人間ドックでも特に異常は見つからず、留置したステントの状態も問題なく、また軽度の肥大が見られると言われていた腹部大動脈についても悪化傾向は見られなかった。血液をサラサラにする薬を飲んでいるため、LDL(悪玉コレステロール)の値も75程度とかつて見たことが無いような良好な数値だった。

 

これらの検査結果を受けて、エントリーした2つの大会への参加を改めて決断した。

3年前に出場したのはコロナによる不開催がとても多かった2020年で、開催される数少ないレースの中から選んだ川崎港のスプリントレースだった。オリンピックディスタンスへの出場となるとさらに1年さかのぼって4年前の木更津ということになる。

 

トライアスリートと年齢の話

スプリントだろうとオリンピックだろうと、問題なく完走はするだろうがパフォーマンスにはあまり自信がない。これは持病が云々ではなくて、年齢的にもあまりここから能力が向上するという気はしなくて、かつての自分を超えることができるというイメージを描くこともなかなか難しい。

トライアスロンは中年のスポーツとなかば揶揄されることもあるように、トライアスリートの平均年齢は高い。おじさんになってから始める人も多ければ、60歳を超えても続けている人も少なくない。

しかしだからと言ってパフォーマンスがおじさん優位というわけではない。トライアスリートの年齢とパフォーマンスについては一度調べてみたかったのでこれを機に調査をしてみた。トライアスロンと年齢にまつわる論点を集めると結構な分量になったので別記事にまとめた。ご興味のある人はこちらを閲覧してみていただきたい。

トライアスロンと年齢の話ートライアスリートの平均年齢、始める年齢、年代別タイムなど | triathlista

 

年齢とパフォーマンスの部分だけをかいつまんで話すと、20代から70代までのエイジグループがある中で、やはり基本的には若いエイジグループほどタイムが良いという結果だった。また若年層側では年齢による相関は見えにくいが、45歳を超えるエイジグループでは年齢によるパフォーマンス低下が顕著に見えるようになっていた。

もちろん個人差はあるものの、40代前半くらいまではがんばれば若いころとそう変わらない成績を残せるかもしれないが、40代後半以降になるとさすがにそれは厳しくなってくるようだ。

 

私は初めてトライアスロンをやったのが16歳の時だったとは言え、20代30代とほとんどやっていなかった時期が多かったので、ODのベストタイムが出たのは40前後の時だった。その私も今年で47歳になるので、上の分け方で言えば紛れもなく年配者のグループに入る。以前のパフォーマンスを超えるのが難しいと感じるもの無理からぬことらしい。

とは言えそんなことでモチベーションが下がらないのがトライアスロンのいいところでもある。タイムが良ければもちろんうれしいのが、それはまあ二の次と言ってしまって良い。年齢なりに、自分なりに、与えられた条件なりに完走できればそれで良いのだから。

 

そして7月のスプリントレースを迎えたのだが…

そんな流れがあっての7月レース。

スプリント(S 0.75km, B 20km, R 5km)ということもあってコンディションにはあまり不安はなく、懸念材料と言えば天候くらいのものだった。1週間前から天気予報を気にしていたのだが、1週間先のレース日までずっと雨マーク、風も7~8m/sなど強めの予報が続いていた。しかもスタート時刻の予想気温は15度と低い。その予報はレース2日前になっても変わらず、凍える雨風の中のレースになることは必至と思われた。

 

結論から言うとこの大会、残念ながら私はDNS(つまり不出場)となった。

それは天候のせいでも持病のせいでもなく、2日前からレース日まで続いた謎の腹痛のせいだった。ウィルス性か何かの胃腸炎的なものだと思われるが、ちょっとした胃の痛みから始まり、37度台の微熱が出て、それからは短い周期で結構激しい腹痛に襲われた。前日の早いうちに治っていればまだ出場の芽はあったが、結局痛みはレース日の朝まで続き、出場を断念せざるを得なかった。

いろいろなことを乗り越えてレースに臨んできたつもりだが、こういう思わぬ展開が待ち受けていることもある。レース日前の2日間、曇天と降りしきる雨を窓外に眺めながら、我関せずと繰り返し痛む腹を抱えながらやるせない気持ちでいっぱいだった。

 

過去を遡れば、出場するつもりでできなかった大会はいくつかある。

例えば前年に続いて出場するはずだった2006年のアイアンマン・フランクフルトは、高額なエントリー費を支払いながらも諸般の事情で出場できなかった。

最近で言えば、2020年はコロナでキャンセルされた大会があったり、2021年は会社の出張でエントリーしていた大会に出場できず、2022年は狭心症再発騒動のせいで出たかった大会にエントリーさえできなかった。にしても直前の体調不良での不出場というのは初めてということになる。

 

まあいい。

どうせ雨も降って風も強くて、さらに低温でのレースだ。それはそれで一興ではあるが、それこそ体調は崩しかねないしバイクでのスリップも危険だ。それにエントリーはまだ8月にもあるし、そっちのオリンピックディスタンスの方が今年の本命なんだから。雨風の冴えないレースに無理して出ることは無いと、神様が手荒なストップをかけてくれたのだろう。

レース当日の朝、まだ時折訪れる腹痛をやり過ごしながらぼんやりとテレビを眺め、そう自分に言い聞かせていた。カーテンを閉じていたので外の様子は見えない。ふとスマホで時間を確認すると、そろそろレースのスタート時刻である10時を示していた。

出られないのは残念だが、そんな風に気持ちのやりくりができるのもまた大人の経験値というものである。レースの天候不順が慰めになるなんて皮肉なものだなと思いつつ、外の様子を見るためにカーテンを開けてみる。本当だったらまさに今頃ローリングスタートの順番を待っている頃だったななどと思いつつ。

 

カーテンを開けて窓の外に広がっていたのは数日ぶりの青空だった。

雨が降るどころか広く青空が顔を出し、暖かい陽光が降り注いでいる。これだけ日が出ていれば体感的にはさほど寒くはない。風もそれほど強くない。風速5mの西風と言ったところか。

穏やかな、レース日和と言っていい、日曜の朝だ。

 

なんでやねん。

 

シリーズ「狭心症とトライアスロン」第6回目はここまで。

次回の第7回目は9月ごろ更新予定。

 

 

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